美味しいマグロを求めて Part5
「マグロの目利き」について、ここまで、マグロの身に見られるサシ、シミや、身割れの問題、さらにマグロの色目などについて述べてきました。
そして、ここでもうひとつ求めたくなるのが、マグロの“旨味”です。それを左右するのが、「マグロに脂があるのか、ないのか」になってきます。もう、読者の皆さんには、「大トロ」「中トロ」「赤身」など、脂ののり具合やマグロの部位によって選り分けられているのはご存知ですよね。
たしかに、マグロに脂があれば、さらにマグロの風味が増し美味しくなります。脂が含まれていないと食感も硬めになり、味は淡白になると言えるのではないでしょう。マグロの鮮やかな赤色と脂が含まれていれば、見ても美しく、口に入れてとろけて美味しさはグッと増します。
それでは、なぜマグロに脂があると、美味しく感じられるのでしょうか。
実際には、脂自体には、はっきりとした味があるわけではなく、脂だけを食べてみても美味しいと感じることはありません。例えば、バターだけを舐めても、美味しいと感じることはなく、パンにぬって一緒にパンと食べてみて美味しく感じますが、それと似ています。
私達の味覚は5つありますね。それは、甘味、酸味、塩味、苦味、そして旨味の5つです。脂そのものは、いずれの味にも属しません。しかし、脂がのっているとマグロは美味しさが増します。
その理由は、脂が口に入ることで、マグロの食感を与え、マグロ自体の味を増やす働きをします。脂の一部は、口の中の唾液によって、脂肪酸とグリセリンに分解されます。この脂肪酸が、マグロ本来の旨味を強めてくれるわけです。こうした舌の上で展開されることが、脳の方に伝えられて「これは、旨い!」となるわけです。お寿司でいただくことになれば、酢飯の刺激やわさび、醤油も加味され、マグロの脂の滑らかな舌触りと柔らかな触感、まるごと舌で展開され、脳に快感を及ぼすわけです。
マグロを取り上げるバラエティ番組などでは、試食の様子はかなりオーバーな演出で、いつも「大したものだ」と思ったりもするのですが、それでもやはり脂がのったマグロは美味しいですね。
では、マグロの“脂のある・無し”を、どのように見極められば良いのでしょうか? 店頭で「大トロ」の札に書いているから、「これは、大丈夫」と、高額なお値段を支払ってしまうのは早合点です。なぜなら、「大トロ」というと、一般的に知られているのは、本マグロの腹身となりますが、本マグロと言っても様々なのです。天然もあれば養殖もあり、国産もあれば輸入物もあります。また、生鮮もあれば冷凍(解凍して店頭に出されます)もあります。本マグロにも種類があり、本マグロには200キロ〜20キロサイズと大きさも様々です。さらに、マグロも生き物ですから、一本一本みな違います。脂ののり具合も違い、鮮度によっても違ってきます。
さて、ここから“最高級のマグロ”を求めて、皆さんのマグロの“目利き”の腕をさらに極めていきましょう!