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デジタル版・新聞

高尾義彦のニュースコラム

女性が輝く時代へ、一歩でも前へ

筆者の故郷徳島で、『難病東大生』の著者、内藤佐和子さん(36)が女性初の徳島市長に選ばれて1年余り。ここ数年、混乱が続いた阿波踊りの運営などをめぐって実績や手腕が取り沙汰されている。その姿を遠くで見ながら、女性がもっと活躍できる社会を作るために何が必要か、国際婦人デー(3月8日)前後の動きを追い、新聞報道などをチェックしてきた。

国際婦人デーが例年以上に注目されたのは、皮肉なことだが、森喜朗・東京五輪パラリンピック競技大会組織委員会会長の女性蔑視発言がきっかけだった。森会長は2月3日の日本オリンピック委員会(IOC)臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言、責任をとって辞任し、後任に橋本聖子五輪担当相が就任した。首相も務めた森氏に代表される世代や指導者層の、女性に対する意識が図らずも露呈した事件だった。

世界経済フォーラム(スイス・ジュネーブ)発表の2021年男女平等ランキングによると、北欧アイスランドが連続して1位で、日本は156か国中120位と前年からひとつ順位を上げたものの、先進7か国では最低だった。政治参加が147位、経済活動が117位というランクづけが、低い評価に結びついている。

1位のアイスランドの場合、世界のトレンドに敏感で開放的な国民性と前向きで有効なアプローチによりトップの水準を保っているという。90%以上の女性が参加したストライキをきっかけに、1980年に世界で初めて女性の大統領が誕生し、現在は女性が首相を務め、国会議員の約4割を女性が占める。育児休暇制度は2000年から早々と導入され、男女の賃金格差を違法とする法律も制定されている。

日本の場合、都道府県を含む1788自治体のうち、内藤徳島市長のような女性首長は36人で、2%に過ぎない。知事に選ばれた女性はこれまでに7人、現職は小池百合子東京都知事と吉村美栄子山形県知事の2人だけ、というのが現状だ。

珍しい事例としてこの春、新聞などに取り上げられたのが、兵庫県尼崎市で、2002年以来、女性市長が2代続いている。稲村和美市長(48)は3期目で、課長級以上の女性の割合を15%、課長補佐・係長級を32%に引き上げる目標を掲げ、20年4月にそれぞれ11.5%、32%に改善している。

尼崎市初の女性市長、白井文さん(60)は「女性はあらゆる場面でマイノリティーを経験し、多様性の重要性を知っていることが多い。女性がリーダーシップを取ることを『見える化』することに意味がある」と語る。

国会議員に目を向けると、列国議会同盟の調査で各国の下院(日本の場合は衆議院)で女性が占める割合は、日本が9.9%で、191か国中165位と位置づけられている(2020年1月)。参議院は22.9%だ。

日本では2018年に「候補者男女均等法」が施行され、男女の候補者を出来るだけ均等にするよう政党に求めているが、努力目標に過ぎず、義務化されていない。19年の参議院選挙では共産党の女性候補が5割を超え、立憲民主党も半数近くにのぼったが、自民は15%、公明8%だった。女性の権利拡大を目指す市民団体は、義務化を求めて法律改正を働きかける運動を進めている。

司法の世界では、最高裁判事15人のうち、女性は現在2人で、最高でも3人だった。「少なくとも3分の1は女性に」と全国89団体が要望。この夏、男性3人、女性1人が70歳の定年を迎えるため、後任に女性を求める声が高まっている。ちなみに歴代183人の最高裁判事のうち女性は7人(4%弱)。全国の裁判官3484人のうち女性は787人で22.6%(19年12月現在)となっている。1994年に女性で初めて最高裁判事に就任した桜井龍子さんは「女性自身が、家からも夫からも自立し、社会をよくするために頑張ろうと自覚することが必要」とエールを送る。

経済界をみると、経団連が企業役員の女性比率を2030年までに30%以上に高めるための取り組みを強化すると発表した。トヨタ自動車、日立製作所など53社が参加を表明。日本IBM、アフラック生命保険が女性管理職を育てる研修を取り入れ、日本IBMデジタルサービスに初の女性社長が誕生した。男性のみだった経団連の役員にも新しい動きがあり、副会長の一人に初の女性としてDeNAの南場智子会長を内定、6月の定時総会で決定する。

将来の日本を左右する学問の世界をみると、国立大学協会は男女共同参画推進のためのアクションプランを策定。25年までに女性教員比率を24%以上に引き上げるほか、学長、理事、副学長に占める女性の割合を20%以上にするなどの目標を定めた。昨年5月の調査では女性教員は9%で、高い目標といえる。こうした動きを背景に、東京大学の藤井輝夫総長は2021年度から学内の女性役員を過半数とする方針を表明した。

大学後輩の内藤徳島市長は「次の世代の女性たちには、気負うことなく自然体で政治ができるようになってほしい」と語る。ひとり一人が真剣に考えることが必要だろう。

高尾義彦 (たかお・よしひこ)

1945年、徳島県生まれ。東大文卒。69年毎日新聞入社。社会部在籍が長く、東京本社代表室長、常勤監査役、日本新聞インキ社長など歴任。著書は『陽気なピエロたちー田中角栄幻想の現場検証』『中坊公平の追いつめる』『中坊公平の修羅に入る』など。俳句・雑文集『無償の愛をつぶやくⅠ、Ⅱ、Ⅲ』を自費出版。


(日刊サン 2021.05.05)

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