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ニュースコラム 高尾義彦のニュースコラム

【高尾義彦のニュースコラム】国際NGO「ピースボート」就航40年、平和への旅

 新型ウイルスの影響でここ3年ほど、出航できなかった「ピースボート」だが、大型旅客船パシフィック・ワールド号による地球一周クルーズが4月に横浜港から旅立ち、40周年の節目の航海を記録した。1983年の第1回以来、クルーズは100回を超え、延べ8万人が乗船したという。発足当初に活動現場に立ち会ったこともあり、ここまで大きく成長した姿に感慨を覚え、船旅を通じて平和を模索する実践的な試みに、さらに期待したい。

 このクルーズを立ち上げたのは、参院議員の辻元清美さん(63)とその仲間たちだ。彼女は当時、早稲田大学の学生で、予備校時代に教えを受けた作家、小田実さんの市民運動に共感し、1980年代に小田さんたちが取り組んでいた韓国民主化運動に関わっていた。その取材の過程で、高田馬場のマンションの一室を拠点に、大型客船のチャーター交渉を進めていた姿を現認していた。

 彼女は今年7月に開いた「辻元清美とともに歩む集い2023~『声をつなぐ』出版記念会」でその活動に触れ、現在も国際NGO「ピースボート」共同代表を務める吉岡達也さんが奈良県の中学時代の同級生だったことなどを紹介していた。著書では、衆院選落選後の心境に触れて、「ピースボート時代の原点に戻る」との思いで「一日も休まない」と決意したことを披露している。「ピースボート時代の20代~30代前半は、いわゆる途上国と言われる国に行き、水道がないところで生活したりもしました」「ピースボート時代の自分が蘇ってきた」と綴り、参院議員として政治の舞台に復活したエネルギーを、ピースボート時代の活動と重ね合わせている。

 辻元さんが1996年に社会民主党(当時)の土井たか子さんの要請で国会議員への道を選んだ頃は、遠くからその活動を眺める立場だった。新聞記者を卒業し会社人間リタイア後には、彼女の国会報告パーティーなどに顔を出し、安倍晋三首相に対峙する姿勢などに注目してきた。参院議員に転身するにあたって初めて全国行脚を重ね、有権者の「声をつなぐ」日々を大事にしていることに、20歳代のイメージを想い出した。

 40周年の航海となった4月の出航は77,441トンの大型船に1,400人が乗船した。これまでの航海では、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北中南米、オセアニア、南太平洋など世界中の200以上の港を訪問している。「ピースボート」のプレスリリースは「各地の世界遺産や大自然を訪れ、さまざまな国や地域に暮らす人びとと顔の見える交流を重ねてきた」と報告し、寄港地の選択や船上での企画に特徴がある。

 例えば4月に出発したクルーズでは、ウクライナ避難民への人道支援に力を入れた。一般社団法人ピースボート災害支援センター(PBV)は、寄付金など1億5千万円を活用し、現地で人道支援を担う団体を応援。ウクライナ・オデッサ出身のビクター・アリモフ船長が名誉船長として乗船し、ルーマニアで参加者がウクライナ避難民の話を聞く計画も組み込まれた。アリモフ船長はウクライナからの避難民で、クルーズ船長としてこれまでに1万人以上を世界に連れて行ったという。

 「ピースボート」は活動の一環として広島・長崎の被爆者の参加を募集し、世界各地の寄港先で被爆体験を証言するプロジェクト「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」を2008年から継続している。被爆者で在日韓国人2世の李鐘根(イ・ジョングン)さんは20227月、93歳で亡くなったが、83歳だった2012年、「証言の航海」を知り、自身の体験を初めて語るようになった。この時の航海は1月下旬から3カ月半、欧州、南米、アフリカ、アジアなど21カ国22都市に寄り、12カ所で証言会を開催した。日本人被爆者9人とともに参加した李さんも本名で体験を語った。それまで証言活動に消極的だったが、帰港後、周囲の説得もあり、広島への修学旅行生などに体験を語るようになった。

 日本人被爆者の証言活動も、福山市在住の広中正樹さんが昨年4月、毎日新聞に取り上げられるなど持続的に続けられている。広中さんは15年に「ピースボート」で23カ国を回り、ロシアのサンクトペテルブルクも訪れた。5歳で被爆し、ロシアのウクライナ侵攻に心を痛め、「子供らの心に一生の傷を残す体験をさせてはならない」と語る。

 ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」国際運営委員、川崎哲さんも「ピースボート」共同代表。広島県出身のタレント、東ちづるさんらが講師として乗船、船旅で体験できるメニューは多彩だ。

 100日間程度の豪華な船旅だけに費用はそれなりに高額で、例えば来年4月出発の船旅の場合、ペア個室で最高額は720万円、最も安価な相部屋の場合、一人178万円といった価格設定。クルーズの実施は現在、NGOではなく株式会社ジャパングレイスに委ねられている。観光目的だけではない寄港地も設定され、費用に対する満足度については、体験者の評価にかかっているといえる。

(日刊サン 2023.8.16)

高尾義彦 (たかお・よしひこ)

1945年、徳島県生まれ。東大文卒。69年毎日新聞入社。社会部在籍が長く、東京本社代表室長、常勤監査役、日本新聞インキ社長など歴任。著書は『陽気なピエロたちー田中角栄幻想の現場検証』『中坊公平の追いつめる』『中坊公平の修羅に入る』など。俳句・雑文集『無償の愛をつぶやくⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ』を自費出版。


 

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