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ローカルの方に、本物の江戸前鮨の美味しさを 知っていただきたい
『すし匠』は孤高の名店だ。ハワイの高級鮨店は、日本の築地直送のネタを売りに鮨を握るところが大半。しかし中澤圭二氏率いる『すし匠』では、築地の魚をあえて使わずに、ハワイ近海やアメリカ西海岸の魚で、江戸前の鮨を握っている。
オパ(アカマンボウ)、オノ(カマスサワラ)、そしてハワイ王族に愛されたモイ(セイヨウアゴナシ)‥‥。江戸前とは、“酢締め”、“しょうゆ漬け”、“昆布締め”、“酒蒸し”など、シャリに合うように下ごしらえを施すこと。
「江戸前は、一番美味しく食べていただくための技法でもありますが、実は塩を当てて魚の水分を抜き、酢締めにしたり漬けなどに手当てをするのは、安全な鮨をお出しするための工夫でもあるんです」
中澤さんは、魚の目利きや手当てをきちんと修行していない外国人が、魚を切って握るだけの海鮮鮨を出すのは危険だと言い続けてきた。
「生ものを食べるなら、相応の手当てが必要だということを忘れがちなのではないでしょうか」
こういう時だからこそ響く言葉だ。では、ハワイの魚にこだわるのはなぜですか?
「日本の魚が美味しいのは、漁師の釣り方と、魚屋さんの手当てが世界一上手だから。それをきちんと伝えれば、世界中でもっと美味しい魚が食べられます。太平洋の真ん中のハワイから、本物の味を発信したいんです」
魚だけではく、ヤシの芯でガリを作り、青パパイアを干してかんぴょうにする。代用するためではない。『すし匠』の手にかかると、生姜より美味しいガリが、ユウガオの実より美味しいかんぴょうができてしまうのだ。 「不自由じゃない、楽しいですよ。我々は仕込みだけで毎日8時間くらい厨房に立ちます。先入観を捨てて日々新しい気持ちで素材と向き合う。チャレンジャーですね。伝統は進化させなければなりませんから」
ハワイのローカルに根ざした、世界にたった一つの江戸前鮨店が『すし匠』なのだ。
“がんばれハワイバラちらし” 5ドル?!
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、飲食業の休業またはテイクアウトのみの発令を受け、『すし匠』が打ち出したテイクアウトは、ド肝を抜くものだった。なんと、バラちらしがたったの5ドル! 最高級の鮨店が、一番安いバラちらしを真っ先に売りに出した。
「はい、今まで通りに食材も仕事も手を抜かず、それぞれの魚介にふさわしい江戸前の手当てをした、すし匠ならではのバラちらしです」
マグロ、エビ、オパ、オノ、煮イカやたこなどの魚介や、パパイアかんぴょうやキュウリ、カイワレ、錦糸卵など、具沢山! 精米したてのゆめぴりかで作られたシャリは、酢の塩梅が程良くてピカピカ、もちもち。
それが5ドルぽっきりとは!
「ハワイで飲食業をするということは、観光客相手になりがちです。でも観光客がいない今、ローカルの方と触れ合う機会をいただいたんだと思うんです。こういう時だからこそ、ローカルの方に本物の江戸前鮨の美味しさを味わっていただくチャンスなんだと。それで思い切って、どなたにでも買っていただける値段にしました」
うちは企業でなくて家業、ビジネスで商売しているのではない、職人としての意地というのがあるんです、と話す中澤さんの目元には大将としての覚悟が浮かぶ。
『すし匠』ならではの“肴”満載のスペシャルで、 おうち呑み
今でこそいろいろな店が取り入れているが、中澤さんは、握り鮨と一品料理を交互に出すスタイルを初めて考案した鮨職人だ。
「お酒を飲む方は、鮨を食べずにつまみの肴を注文しがちです。ならば肴と鮨を交互に出せば、鮨も自然に味わってもらえるかと思いまして」
『すし匠』ハワイ店でもそのスタイルは継承され、数々の名物肴が生まれている。蒸しコナアワビの肝乗せやあん肝乗せ、ロブスターの紹興酒漬け、ホワイトサーモンとウニの松前漬け、カラスミ大根‥‥カウンターで食す鮨コースで人気を博していた一品たちが、“すし匠スペシャルセット”50ドルのテイクアウトにも盛り込まれている。
予約6ヶ月待ち、300ドルの高嶺の花だった幻の味が、今なら味わえる! 端正で品格があり、職人仕事が隅々にまで行き届いた詰め合わせ。甘味は自家製葛餅のきな粉合え、ハワイアンブラウンシュガーで黒蜜まで手作り!
注文して、店に取りに行ったら、大将の中澤さんを筆頭に、真っ白な白衣に前掛け、マスク姿の職人さんが、予想以上に多く働いていた。ああ、これだけの人をかけなければ、こんなに手の込んだ料理は食べられないのだと思い知った。
そしてもう一つ、スペシャルセット購入の方に嬉しいお知らせ。
焼酎製造所“波花”と、コラボして特別に仕込んだ『すし匠』限定の芋焼酎(750ml)と、『すし匠』でしか飲めない、発泡にごり酒“雁木”など、酒ソムリエがセレクトした日本酒の中からお好きな1本、計2本セットを破格のお得値50ドルで購入できます。 その場しのぎのテイクアウトではなく、やるからには本気、本物の味を届けたいと願う、『すし匠』の職人たちの真摯な思いが込められた江戸前料理を、この機会にぜひ、おうちでゆっくり堪能してください。
(取材・文 奥山夏実)
すし匠ハワイ リッツカールトン・レジデンスワイキキビーチ
【電話】 808-729-9717
電話予約は12:00–18:00 pm
日祝定休