さて前回はカニカマの原料となるすり身、そして原料となる“スケソウダラ”についてお話ししました。今回はそのスケソウダラの漁場について、深掘りしてみましょう。
スケソウダラ漁は冬の厳しい日本海、オホーツク海、ベーリング海などの北太平洋の漁場などが主にあげられます。遡って1960年代に、日本で冷凍すり身の加工技術が発明されました。そこから北海道、東北地方の日本漁船は、遠く北太平洋、ベーリング海を目指し、底引き網漁やトロール漁でスケソウダラ漁を行うようになりました。1970年代に入ると、水産業は大成長を遂げ今日の大手水産会社へと成長しました。
しかし1980年代になると、世界は200海里(約370km)時代に入ります。すなわち、200海里の範囲以内を“排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)”とすることで、他国船はその海域で漁ができなくなってしまいます。
こうして日本側は、アメリカやロシアと様々な漁業協定を結び漁を行いますが、徐々に締め出されていくことになります。そして今日は、この海域ではアメリカ漁船によるが漁獲が行われています。
ベーリング海での操業と聞くと、テレビドキュメンタリー番組で紹介されるように、冬の過酷な荒れ狂う海のカニ漁を想像するかもしれません。しかし、カニ漁だけではなくスケウダラ漁も行われています。ハワイ諸島から真っ直ぐ2825マイル北上すると、ベーリング海に到達します。海水表温も摂氏マイナス1℃〜2℃になります。ハワイの年平均海水温度が23.3℃、夏には26.7℃ですから、いかにベーリング海が危険な海であるかが想像できます。
そして、北の海には“ポーラー・ロウ(Polar Low)”と呼ばれる冬季の海洋上で発達する小低気圧(水平スケールで200~1000km)が発生するのです。ポーラー・ロウは、温帯低気圧や台風と比べてサイズは小さいのですが、急に発達して気温は氷点下になり、強風や大雪も伴い漁船にとってはたいへん危険な現象になります。北大西洋やグリーンランド周辺、カナダ沖、ベーリング海、南極海など高緯度の海洋上で発生します。比較的緯度が低い日本海でも発達することがあります。
私も二度ほどアラスカ(コディアック島)へ行ったことがあります。夏の終りの9月初期のこと、防寒具で身を包んでいても海上は冷え、漁船も揺れ、波しぶきが舞うアラスカの黒い海が思い出されます。
今日も、厳しい北の海でスケソウダラを追う漁師たちが、命懸けの漁を行っているのですね。