オンライン留学と少年ルカ
日本ではつかの間の夏休みの真っ最中。新型コロナの影響で休校とオンライン授業が続いた娘の中学では、今年の夏休みは3週間の短さです。子どもにとって刺激のない生活が続いており、「少しでも思い出に残る夏になれば…」とイギリスの語学学校へ2週間の“オンライン留学”を申し込んでみました。
お得な留学体験
ハワイの学校やニュージーランドの学校も検討しましたが、時差的に受講しやすいのがイギリスの学校。現地午前9時半が日本の午後5時半のため、娘は早めの夕食を済ませた後、午後8時までイギリスのカンタベリーの学校にバーチャル留学です。ちなみに授業料は2週間で240ポンド（約3万3190円）。娘の学校で予定されていたカナダへの語学留学を考えれば10分の１以下（新型コロナで今年は中止）でした。
ドキドキの初日
授業初日。娘は5歳～8歳までハワイの現地校に通い、今もフィリピン人の先生と暇さえあればネット英会話をしていますが、自室の机に座る横顔はさすがに緊張気味です。Zoomの画面上に先生の顔が映ると、初対面の先生の英語の指示が飛び、画面上のチャットも駆使して、別のサイトに飛んで最初の設定をしなくてはなりません。同室にいた私のほうがハラハラ、ドキドキ…。見守るしかなかったのですが、会社の上司からちょうどかかってきた電話に応対している間に、一人で設定し、さっさと授業を始めていました。
グループは中学生の生徒8人に女の先生１人。日本の女子生徒が大半とのことでしたが、一人ルカという名前のイタリア人の少年がいるそう。授業は1日3限あり、そのうち1限はイギリス文化について学ぶカリキュラムで、初日はロイヤルファミリーの歴史について学んだと嬉しそうで、何とかスムーズに“留学”はスタートしました。
本当にジコチュー？
ところが5日目に娘の号泣事件が発生。休憩時間に私が部屋をのぞいてみると「先生がルカばかり当てて、私の番を３回も飛ばした」と大粒の涙をポロポロこぼし、訴えるのです。オンライン留学を淡々とこなす娘ですが、まだ13歳。「ルカはジコチューだ！」と憤っています。
お行儀よく発言の順番を守る日本人と、自己主張をしっかりし元気に発言するイタリア人。何となく目に浮かぶ光景ですが、娘にはカルチャーショックな体験だったよう。ルカは家にある自分の一番大切なものを発表した際に、お兄さんからもらったNBAのバスケ用靴下を見せたといい、純粋そうな普通の少年です。私の中学時代には英語力もネットもなく、当時は考えられない世界で実現している今回の留学体験ですが、会ったこともない不思議な縁でつながった少年との交流や、行き違いを何とも不思議な感覚でみた私でした。
新しい時代を受け入れて
オンライン留学は2週間の予定で、ちょうど折り返し。卒業の日を笑顔で迎えられるよう陰ながら見守り、新しい時代の風を受け入れてみたいです。
竹下聖（たけしたひじり）
東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。
東京・大手町発 マスコミ系働き女子のひとりごと Vol.25
（日刊サン 2020.8.14）
