よく、ヨガの練習などをしていると「今の呼吸に集中して」などと言われます。ヨガやアーユルヴェーダでは、「今」に意識を向けることをとても大切にします。それはなぜでしょう。
それは、全ての基本は「今」にあると考えられるからです。過去、現在、未来を行き来することは、肉体的には不可能ですが、「今」の心や精神の状態が未来を作り出しますので、現在も未来も、そして過去も、全て繋がっているのです。もっと言えば、ある「過去」に感じた思い込みがあれば、その思い込みを「現在」も持っているので、その思い込みが「未来」でも起きるのです。
例えば、過去に男性に裏切られて「男性とは人を裏切る最低な存在だ」と思ったとします。世の中には素晴らしい男性もたくさんいるにも関わらず、過去の思い込みにより、魅力的な男性に出会うことができないという現実がやってきます。そうした現実を元に、将来も素敵な男性に出会うことは不可能だと思うようになってしまうのです。
これは極端な例ですが、私たちの日常生活には、「今」に集中することを遮るきっかけがたくさんあります。例えばスマホの通知で食事をしているという「今」を遮るという行為です。他にもよくあるのが、ずっと行きたかった場所への旅行で、旅行中に、次回の旅行ではどこに行こうかな、と考えることです。その旅行をしなかったら、次の旅行の計画を立てられないということはありませんね。
食事や旅行の例は、将来を変えるような大事件ではありませんが、些細と思われることが、将来に影響を与えるものです。マルチタスクが必要な「今」があれば、それらに集中することが必要です。ですが、旅行中に次回の予定を立てないと将来に問題が起きる、という可能性は低そうですね。「今」に集中するべき時を自分で選別できるようになることも必要かもしれません。
もし、ヨガが運動の目的であれば、毎日やらなくても良いのです。ヨガは心のためにあります。そしてヨガは、マットの上に座っている時のものだけではありません。カルマヨガと言って、行動すること自体がヨガであるという考え方もあります。
肉体を使ってポーズを取りながら呼吸する行為をヨガではアーサナと呼びます。アーサナは、「今」、私はここにいるのだ、ということを実感するための行為なのです。
幸せ修行 No.267
加藤ジェシカ
世界中50か国以上を旅する中で、地球にはエネルギーのような何かが存在することに気づく。2017年、ヨガの勉強を通してアーユルヴェーダに出会い、渡印。日常に寄り添うアーユルヴェーダがテーマ。
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