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コラム 神楽坂発 お身体へのお便り

【神楽坂発 お身体へのお便り】子供たちの将来の健康を見据えて

 ハップル宇宙望遠鏡を使って撮影された幻想的で美しい銀河の画像が公開されました。まるで宇宙に拡がる巨大なリボンのような姿をご覧になった方もおられるでしょう。涼やかな夜風の中で見上げる夏の夜空は、ひと時地上の混乱や諍い、不安を忘れさせてくれます。生命に必須のアミノ酸の起源が宇宙から飛来した隕石などに含まれるアミノ酸由来であるとの研究報告も数多あります。太陽が生命の母であるならば、宇宙は父かもしれません。そしてその子である地球に私たちは膨大な恩恵を受けて暮らしています。私たちにはその恩恵に感謝しつつ、与えられた命を健やかに育む責任があるように感じます。

 ヒトは他の地球上の生命と同様に両親から命を受け継いでいます。子供たちの健康はお母様の胎内に命の芽が宿った時から始まります。サザンプトン大学のデヴィッド・バーカー博士は英国の地域別比較研究によって出生時に低体重であったヒトほど成人後の心血管トラブルによる死亡率が高いことを報告しましたが、当時の学会では懐疑的な意見が多数を占めていたようです。

 ところが、その後様々な研究結果が世界中から寄せられ、現代では「胎児期における低栄養状態は、何十年も経過してから心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、高血圧など様々な生活習慣病のリスクとなる(成人病胎児起源説)」は確かな事実として広く受け入れられています。日本ではかつて小さく生んで大きく育てるが合言葉のように使われた時代がありましたので、この事実はまだまだ周知徹底されていないようです。

 特に若い女性のスタイル重視傾向によって、出生時の低体重児は増加傾向になっています。胎児のときに栄養状態が悪いと胎児はその状態で命を繋ごうとするために、栄養は倹約しなくてはならないと細胞が記憶してしまいます。(倹約表現型と呼ぶそうです)身体が低栄養仕様となったまま出生した子供たちは、栄養が豊富であればあるほど栄養過多になってしまいます。両親が小さかったからたくさん食べて大きくなって欲しいと思われるのは自然ですが、小さく生まれた子供たちが将来の生活習慣病から逃れるためには栄養の管理が重要な項目となります。

 では、子供たちの将来の健康は母親だけが背負うのでしょうか? 日本の理化学研究所の研究報告では、父親の低たんぱく食などの食事の影響が精子を通して子供に肝臓での遺伝子発現を変化させ、ひいてはコレステロールなどの代謝に変化もたらすことがわかりました。

 少々難しい内容となりましたが、簡略化すれば、両親の栄養状態が将来の子供たちの健康に直結すると言えるでしょう。これから出産を考えておられる方々にはくれぐれもバランスのよい高栄養食とストレスを逃がす方法を模索しながら子供たちの成長を見守りましょう。

神楽坂発 お身体へのお便り No.108

安田祥子   Akiko Yasuda

株式会社jast代表取締役会長 

統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー

最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。

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