東大ドクター・森田敏宏医師推薦!短時間&低負荷で筋力UPできる加圧トレーニング
血流を制限した状態で行うトレーニング方法
日本ではポピュラーになりつつある一方、ハワイではまだあまり知られていない「加圧トレーニング」。加圧トレーニングとは、専用ベルトで手足を固定して血管を適切に圧迫し、血流を制限した状態で行うトレーニング方法だ。ボディービルダーで日本加圧トレーニング学会会長の佐藤義昭氏が法事で正座をした際に脚が痺れたり腫れたりすることにヒントを得て開発したもので、近年、専門家らの研究により効果的な筋力UPを始めする様々な効果、特長が明らかになっている。
キーワードは「血流」「酸素」「乳酸」
私たちの身体にくまなく張り巡らされた血管内には常に血液が流れており、身体の様々な組織に酸素を送り届けている。加圧トレーニングではまず、専用バンドで手脚の付け根を圧迫することでこの血流を制限し、わざと血管に酸素が不足した状態を作る。「酸素不足」の状態で筋肉トレーニングをすると、血管に溜まる乳酸の量が増える。乳酸が溜まった状態での運動は、キツさを感じる一方、乳酸には「筋肉量を増やす」という働きがある。加圧をしない普通のトレーニングでも負荷が重いと乳酸の量が増えてキツさを感じるが、加圧トレーニングの場合は、軽い負荷の運動でも重い負荷で運動を行ったかのように乳酸の量を増やすことができるため、結果的に効率的な筋トレが可能になる。
加圧トレーニング実践例
加圧トレーニングを実演するインストラクターの安孫子さん。フィットネスバンドを併用することで、背中、胸、肩、手脚など全身の筋肉を短時間・低負荷で効果的に鍛えられる
軽い負荷で効果的に筋トレ
より具体的に説明すると、通常のトレーニングでは、その人が持つ最大筋力の65%以上の負荷をかけなければ筋肉の増加は起こらない。しかし、加圧トレーニングでは、適切に血流を制限することにより最大筋力の20〜40%の低負荷でも筋肉が増加する。例えば、10kgの重りを持ち上げられる人が筋肉トレーニングをしようと思った場合、通常のトレーニングでは7kg以上の重りを使わないと筋肉の増加が起こらない。しかし、加圧トレーニングでは2〜3kg程度の重りで筋肉を増加することができる、ということになる。
短期間での筋肉増加も可能
また、通常は筋肉の増加が起こるまでに最低3ヶ月間はトレーニングが必要だが、加圧トレーニングでは短時間でそれが可能になる。通常は、トレーニングの最中に一旦筋肉の細胞が破壊され、再生される段階で筋肉が増加する。そのため、必要以上の細胞破壊を起こさないよう、トレーニング・ルーティーンに2日から1週間程度の「休みの期間」が必要になる。
一方、負荷の軽い加圧トレーニングでは筋肉の細胞破壊が起こらないため、休みの期間を設けずにトレーニングを継続できる。つまり、同じ期間のトレーニングでも、加圧トレーニングの方が、通常のトレーニングよりも短い期間で筋力UPが可能になる。
「サルコペニア肥満」の予防・改善
筋肉は年齢と共に減少していくが、特に脚の筋肉が落ちて身体を支えられなくなり、転倒して骨折し、寝たきりに近い状態になるという高齢者のケースは多い。筋肉量は若いうちから徐々に低下していくので、できるだけ早いうちからトレーニングを習慣化することが寛容だ。もう1つ気を付けておきたいのが、一見若い頃と体型が変わっていないように見えても内部では筋肉が低下し、脂肪が増えていることがあるということ。「サルコペニア肥満」と呼ばれるこの状態は、見た目では判別しにくいため、自分では気付けないことが多い。
加圧トレーニングはこの状態の予防にもお勧めできるが、既にサルコペニア肥満になっている高齢者の方でも、加圧トレーニングで無理なく改善することができる。
高齢者でも無理なく筋力UP
高齢者にとって加圧トレーニングがどれほど有効かをご説明するため、日本加圧トレーニング学会理事の森田敏宏医師が行ったある実験をご紹介したい。この実験の対象者は20人で、平均年齢は70歳。対象者らは以下の2つのグループに分かれ、週2回のトレーニングを3ヶ月間にわたって行なった。
①加圧トレーニングのグループ(9人)
●レッグ・エクステンション……膝の曲げ伸ばしを最大筋力の20%の負荷で行う
●レッグ・プレス……両脚で重りを押す運動を同30%の負荷で行う
②有酸素運動のみのグループ(11人)
結果、加圧トレーニング群はトレーニング前に比べて太ももの筋肉が22%増加し、筋力は20〜30%増加した。また、筋力が上がるとともに生活機能の改善もみられた。生活機能を測る目安として、椅子から立ったり座ったりする運動を1分間で何回できるか調べたところ、加圧トレーニング群は回数が18%増加したという。
認知症による歩行障害の劇的な改善
加圧トレーニングによって認知症による歩行障害が劇的に改善したという事例もある。認知症でほぼ歩けない状態だった70代半ばの女性が加圧トレーニングを始めたところ、2ヶ月後には足元がおぼつかないながらもゆっくりと歩き、自分で椅子にも座れるようになった。そしてトレーニングを始めて半年後には、大きな歩幅でしっかりと歩けるようになり、曲がっていた腰もほぼ真っ直ぐになった。森田医師は「この女性がスタスタと歩く姿は、まるで別人のようでした」と語る。
膝や腰などの痛みを改善
加圧トレーニングは身体の痛みの改善にも有効なことが分かっている。1回トレーニングしただけでも痛みの改善を感じられるが、トレーニングを継続したときに感じられる慢性的な改善も期待される。森田医師が加圧トレーニングを広めようと思ったきっかけも痛みの改善だった。
森田医師は11歳で膝を傷め、以来25年間も膝の痛みと闘ってきた。一生この痛みと付き合っていかなければならないのだろうと諦めていたが、加圧トレーニングを始め、気がついたら痛みが全くなくなっていた。それから1年経過しても痛みが再発しなかったため、フルマラソンを走ったり、富士山に登ったりと、痛みのあった頃にはできなかったことができるようになったという。
森田医師は「脳への刺激、血流の改善、筋力UPなど、加圧トレーニングがもたらす種々の効果が痛みの改善に影響していると考えられます」と語る。
成長ホルモンの分泌は安静時の約300倍
また、成長ホルモンが多量に分泌されるという特長も見逃せない。成長ホルモンには、脂肪分解によるダイエット効果のほか、抗老化、成人病(動脈硬化、糖尿病など)を予防する働きがある。通常、軽い負荷による運動では成長ホルモンはほとんど分泌されないが、適切に血流を制限した「加圧」の状態では、軽い負荷でも安静時の約300倍という多量の成長ホルモンが分泌される。成長ホルモンは年齢を重ねるに連れて分泌量が減少していくため、加圧トレーニングで成長ホルモンを増やすことで、年齢以上の若々しさや健康を保つことも期待される。
そのほか、脳の活性化や集中力の向上など、副次的な効果も期待できる。より詳しく知りたい方は森田医師のYouTube動画「驚異の効果! 加圧トレーニングとは?」をご覧いただきたい。
ハワイで始めよう! 加圧トレーニング
ここまで読んでご興味を持った方に是非お知らせしたいのが、この度、オアフ島でも加圧トレーニングのレッスンが受けられるようになったということだ。
「軽い負荷でもできる加圧トレーニングは、普通のトレーニングはもちろん、高齢者の方や身体の痛みを改善したい方、病後や術後で体力が落ちてしまった方に是非お勧めしたい方法です。1回のレッスンは30分弱。気軽に始めていただけます」と語るのは、インストラクターの安孫子健太郎さん。安孫子さんは「ベストボディージャパン2015」京都大会優勝、翌年には同全国大会2位という経歴に加え、20年のダイビングインストラクター歴を持つプロフェッショナル。現在はカカアコのCafé Graceでマネージャーとして働く傍ら、加圧トレーニングのインストラクターの資格を取得し、その指導と普及にあたっている。
「ご希望の方にはボディービルダーとしての経験を活かした食事指導も行えます」と語る安孫子さんのレッスンは、Café Graceでの受講、オンライン、出張と、ご都合に合わせて選択可能。初回のみ無料で体験できる。ご興味のある方は、いますぐお気軽に(808)295-9799へテキストメッセージを。
(取材・文 佐藤リン友紀)
日刊サン 2020.08.07