ご家族でお腹いっぱいに美味しい寿司を安くいただこうとすれば、やはり回転寿司となりますよね。ところで今回は“ヤミマグロ”の話をしたいと思います。そもそもヤミマグロの“ヤミ”とは、“病み”ではなく、“闇”のことなんです!
日本で回転寿司店を全国ナンバーワンの“スシロー”が、最近ヤバイことをやらかしてしまいました。全国634店舗を展開しているスシローですが、マグロ漁獲規制から逃れた“隠れヤミマグロ”を取り扱っていたことが発覚したのです。そのヤミマグロは、青森県の“大間産まぐろ”のことで、昨年の12月から今年3月にかけてお店でお客さんに提供していたのでした。
その量は約16.7トンと言います。日本のマグロ漁は、太平洋クロマグロの資源管理を協議する“中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)”で、きちんと漁獲枠が決められています。毎年日米中韓や太平洋島しょ国など26カ国が参加して国際会議を行っており、各国の割当のマグロ漁獲量を決めています。ところが、青森県の大間の漁師、水揚げ業者、流通業者とグルになって国際法違反を行ったということです。
この一件が発覚すると、スシロー社からの謝罪文が公表されましたが、昔からの悪しき官民癒着ベッタリの慣習が、国際法遵守に対しても、かなりゆるゆるにしているように思います。
日本では大間のマグロというと大人気で、東京卸売市場でも正月明けの初競りで、一匹何千万円もの値がついたりと何かと話題になっています。そうした価格相場に旨みを感じる漁師や業者がいて、“ヤミ漁”や“脇売り”をしでかしてしまうのでしょう。海に出る漁師さんの言い分は、「思うよう漁ができないと、船を買った借金を返せない」「跡を継ぐ息子のために船を仕立て直したのに、漁獲を制限されたのではたまらない」などさまざまです。穫れば大金になる“黒ダイヤ”とも言われるマグロに目が眩んでしまうのでしょう。
確かに、一本釣りや小型のはえ縄船が多い大間のような沿岸漁業者と、大型の巻き網漁船と比べて、漁獲枠が少な過ぎることも、ヤミ漁を誘発させる要因の一つなのかもしれません。小型漁船を操る百数十人もの漁師たちは競って我先にとマグロ追いかけ、獲ったもの勝ちなのですから厳しい世界です。しかし、漁獲の未報告が発覚すれば、その分は翌年の漁獲枠を減らされことになり、漁師は自分の首を自分で絞める結果になります。
マグロ大好きの一般消費者も、余りにも海や魚や漁師のことも不勉強なのかもしれません。盛んにSDGsや、トレーサビリティ、サステイナビリティーと国あげて情報提供をしていますが、トドのつまりは“安ければ良い”で、買い物かごに入れる魚について、店員さんに質問をすることも、ラベルを見て調べてみることもしないことが、ヤミマグロを市場に出してしまう要因にもなっているように思います。