ウイスコンシンで独り言 近所のジュラシックパーク
私が住むウイスコンシンの近所の一角は大きな家々が立ち並び、その広い庭は芝生の整備がよく行き届いていて、きれいな花の花壇の素敵な庭を多く見かけます。でもそんな中で異彩を放っているのが、自分達のコンドから50メートルほど離れた、ご近所のジムさんのお庭。この庭には実物大とも思われる恐竜が何頭もいて、近くを通る人達を威嚇しています。塀には「危険」というサインで警告がなされていて、死体が白骨化した人骨がいくつも並んでいます。ちょっと異様というか、不気味ですねえ。
ご近所のジムさんと恐竜
3年前に自分達がこの辺りに引っ越しをして、近所の散歩を始めてこの変わったお庭に気づきました。ある日たまたま近所のジムさんが庭の手入れをしているのを見たので、冗談で「怖いお庭ですねえ」と言うと、「いや、怖くなんかないよ。こちらに来て」と、庭を案内してくれました。このジムさんのテニスコート二つ分ほどの裏庭に所狭しと、恐竜の他、骸骨、マネキン、実物大のクマや巨大カメなどの彫刻が置かれていて、ちょっとジュラシックパークぽいのです。
ジムさんのお話を聞いているうちに、ジムさんはベトナム戦争の帰還兵で、うつ病を長く患っていたそうです。数年前に心臓手術をした際にお医者さんから、うつ病を治すのと、心臓病治癒のために何か生きがいのようなものを持つように言われたとのこと。そして、ある日突然、お庭を恐竜などで飾る、ジュラシックパークのような物を作ろうという考えが浮かんだのです。
早速、ジムさんはインターネットで恐竜の模型をフィリピンに注文し、4頭の恐竜がトレーラーで運ばれてきましたが、その時は近所の人達はびっくりしたことでしょう。「近所にはよく言わない人がいることは知ってるけど、そんなこと気にしないよ」と。このジムさんのジュラシックパークは様々な動物の模型が加えられ、絶えず進歩、改良されています。
あと10日ほどで、今年もハロウィーン。その日は子供達の訪問をたくさん迎えて、ジムさんは多忙になります。遠くから来る親子連れもいて、子供達でにぎやかになる自分のジュラシックパークを見つめながら、してやったりと微笑むのでしょう。
とどけMahalo! アメリカ本土便り No.87
大井貞二(おおいさだじ)
1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。
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