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ハワイでの終活

ハワイに住む日本人シニアの住み替え

ハワイに住む日本人シニアの住み替え

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 ハワイの高齢化率(65歳以上)は全米平均の3倍以上の速さで進み、今年2020年には人口の過半数を超えると予測されている。

 またここ数年、高齢者による自宅の販売件数が上昇しており、2009年に920件だったのが、2014年には1,410件と、わずか5年で65%も増加した。

 高級住宅地であるホノルルのマノア地区で、昨年1年間に売却された住宅の70%は、65歳以上のオーナーだったという。

 その背景には、多くの人は最後まで自宅で暮らしたいと希望しているが、子どもが独立したり、伴侶が亡くなったりして、広い家が必要なくなってしまうからだと考察できる。

 また光熱費や管理費がかさみ、階段や段差、手すりのないバスルームやトイレなど、バリアフリーのための改修にもお金がかかる……などの理由があるのではないだろうか。

 自宅をダウンサイズして住み替えたい、リタイア後は今より安い家賃のところに住みたいと願うシニアは実に多い。

 またその先には、「介護が必要になる前に、日本に帰った方が良いのではないだろうか?」という不安や迷いもある。

 ハワイに住む日本人のシニアで、英語をあまり得意としない人たちは、英語の不動産情報を調べたりするのが苦手だ。アプライなどの手続きや書類は複雑で、SNSを日常的に使っていないシニアには、大きな情報格差も生じている。

 終活特集の今回は、ホノルル市高齢者対策室『RSVP』で日本人部門を担当するイング・清子さんと、シニアを中心に100名近い会員が集う『木曜午餐会』会長の新名瑛さんに、『ハワイに住む日本人シニアの住み替え』について実情を聞いた。

 イングさんは、ハワイ生活の困りごとや情報相談を日本語で行うNPO 『Jセンター』を主宰し、新名さんも設立当初からのサポーターとしてJセンターを支えている。

 

“アフォータブルハウス”は高所得者向け?!  

 ハワイ州では低・中所得者を対象に、新築コンドミニアムなどの普通の物件を、年収や家族構成に応じて市場価格より安く提供する『アフォーダブル・ハウジング』が普及し、住み替えを希望するシニアの関心も高い。

 ハワイは米国内でもトップクラスに賃料が高く、住宅価格も年々高騰している。そうした事情を背景に、ハワイ州主導のもとHHFDC(ハワイ住宅金融開発公社)が中心となって、積極的に『アフォーダブル・ハウジング』プログラムが展開されているのだ。このプログラムで不動産の開発プロジェクトを始めれば、開発会社は税金や許認可を有利に進めることができる。

 少しでも安く住宅を手に入れたい人と、一部のユニットをアフォーダブル・ハウジングにすることで優遇される供給会社の両者にウィンウィンの不動産開発ではあるのだが……。新名さんは、バッサリ反論する。

「ホノルル及び近郊のアフォーダブルハウスの賃貸物件は、ステュディオなら家賃1,200ドルから、1ベッドルームなら1,600ドルはするでしょう。住宅費っていうのは収入の約1/3くらいが目安だから、月の収入が3,600〜4,800ドルは必要なわけですよ。ちっとも低・中所得者向けじゃない、高給取りが対象ですよ。アフォーダブルとは“調達可能”という意味でしょう。年金収入で暮らすシニアに調達できるはずがない」

 また賃貸タイプも購入タイプも、購入条件がなかなか厳しく、提出する書類、面接など、手続きも厄介だ。 「シチズン、あるいはグリーンカードを保持していること、自分が居住すること、貯金はどれだけたくさんあってもいいのだけれど(笑)、世界のどこかに既に不動産を所有していないことなどなど。これはリアルターでもあるイングさんが詳しいので、興味がある方はイングさんに相談すればいいんだけどね。イングさん自身、アフォータブルハウスに住んでいるんだよね?」 「はい、私は2004年にカリフォルニアからハワイに移住しました。ハワイは父の故郷でもあるので。その時、仕事を辞めて失業中だったので、アフォーダブルハウスに入れる条件を満たしていたんです。それでカカアコに新しくできたアフォーダブルハウスの2LDKに入居しました。2004年当時は月の家賃が700ドルなので助かりましたけど、毎年値上がりして、今では新規契約の場合1,800ドルもします」

 

“マイクロユニット”アパートがハワイ初登場

「アフォーダブルハウスは高いという声を受けて、もっと安いユニットを開発しようと今、クックストリートに“Nohona Hale”という狭小アパートを建設中です。ステュディオタイプで面積は355スクエアフィート、10坪ほどのマイクロユニットです」

 単身者には良いが、夫婦で住むには狭さを感じるかもしれない。家賃は対象者の収入によるが、月額559〜999ドルだという。

「16階建ての高層ビルで、111室のステュディオアパートメントにそれぞれ専用のベランダと、1階には商業スペースがあります。コミュニティガーデン、ラウンジエリア、フィットネスルームもあるので利便性は良いと思います」

 イングさんが主宰する『Jセンター』では、こうした最新の不動産情報や、低所得者向け住宅税額控除(LIHTC)に関する情報、手続きのサポートをしている。

マイクロユニットアパートNohona Hale。外観と間取り

日本で住まいを探すなら、“UR都市機構”が有望

 新名さん自身は、いずれ日本に帰ることを視野に入れている。 「ハワイでシニアハウスなどに入っている人の感想を聞いたり、実際に物件を見に行ったりしていますが、僕には高過ぎて入れない。1万ドル以上の高級なシニアハウスは毎日ステーキみたいなディナーなんだけど、我々はやっぱり和食が食べたいわけですよ。外国なんだから仕方ないんだけどね」

 でも日本に帰って住まいを探すとなると、自己資金や保証人などが必要となり、簡単には帰国できない。

「保証人の必要がなく、賃貸料も高くないUR都市機構はお薦めですよ。昔、住宅公団と呼ばれていた独立行政法人で、都市再生のために高島平の多摩ニュータウンなどのマンモス団地など提供しています」

 リノベーションをしたり、IKEAや無印良品とタイアップした物件もあり、若い人にも人気だ。 「保証料もなし。礼金も仲介手数料もなしです。団地だけでなくタワーマンションの物件もあり、バリアフリーの高齢者向けの賃貸住宅も扱っています」

 日本全国約72万件もの住宅を扱っている。家賃の目安は1DKで都心なら10万円代から、東京近郊の場合5万代から、千葉県の成田あたりなら3万円代からある。 「僕は旅行が好きなので、国際線の発着がある九州の福岡を調べたことがあります。東京より物価も安いしね。4〜5万出せば夫婦二人で十分に暮らせる物件がありましたよ」

 “UR都市機構”で検索すると、自分の条件にあった物件を閲覧できる。

「一番の問題は、いつ日本に帰るかです。ハワイでピンピンコロリが理想だけど、いつ介護が必要になるかはわからない。となると元気なうちに帰国したいわけだが、いつまで元気でいられるかは神のみぞ知るです(笑)」

(取材・文 奥山夏実)

NPO J♥センター 808-226-2934 (イング清子)

(日刊サン 2020.07.03 ハワイでの終活vol.18)

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