早い朝、いっせいに並んでいる新鮮なマグロを、ホノルル魚市場で眺めるのは壮観です。一度足を踏み入れてみたら、その迫力に感動すること間違いないしですね。その中にマグロ魚体の半分、ないしは尾の方が失われたマグロを見つけることがあります。美味しいトロの部分の腹部だけがざっくりとないマグロもあったりします。競り場では、予めその傷んだ部分を切り落として競り場に並べています。漁師さんも競り人さんも、こうしたマグロには当然、無念な気持ちでいっぱいとなります。
このようなマグロを見て素人の目にも「あ~、これはサメに食われたのかな?」と想像しますが、実際に、漁師さんたちの話によると、マグロを襲うシャチやサメがいると言います。シャチはとても頭がよく、マグロの釣り針のかかっている頭を残して、他の全体を食べ尽くしてしまうそうです。
シャチは何頭もの集団で泳いでいてマグロを狙ってきますが、サメの場合は一匹でも襲ってきて、マグロの一部、腹の部分に一番先に噛みつき、頭の部分は残すそうです。せっかく釣り上げたマグロのもっとも美味しいところが噛みつかれていたりすると、漁師にとってはたまったものではないですね。競り場でも二束三文の値段になってしまうのですから。
マグロ漁船の漁法として延縄(はえなわ)という40キロ
の長さにもなる縄に2000本ほどの針をつけ、餌をつけて海中に流します。餌としては、イカ、サンマ、サバ、ムロアジ、イワシなどですが、賢いシャチやサメはこうした釣り針の餌を狙うのではなく、釣り針にかかったマグロを狙うのです。
ところで、ハワイでもサメによる人への被害が報じられますが、世界で最もサメによる人的被害の多いの国はオーストラリアで、その次がアメリカとなります。
オーストラリア環境相が調査した結果では、サメによる人的被害は、クジラの生息数と関連していると推測しています。すなわち、近年サメによる被害が増えている原因は、クジラを保護し過ぎたのではと言うのです。クジラが餌を求めて海岸近くまで来ることで、サメもクジラを追いかけて近寄って来ていることになります。
サメは大食漢で嗅覚が優れ、傷ついたり弱ったりしているクジラ、小さい子どもクジラを狙うということです。このようにしてオーストラリアでは、クジラを保護した結果、サメも増やしたのではと言っているのです。また、オーストラリアではサンゴ礁やそこに住む魚も保護しているため、サメにとっては絶好の餌場になっているのです。
こうした、海生物の生態系へ下手に人間の手を加えることは、逆に人間に深刻な禍をももたらしてしまうのかもしれませんね。