日本で起きている“偽装”海産物が、店頭に現れたりレストランの食材に使われているのにはとても驚かされてしまいます。マグロ、アサリ、そしてウナギなど今まで取り上げてきましたが、もちろんこうした“ヤミ漁”や“ヤミ取引”を、国や地方自治体は野放しにしているわけではありません。それでも規制や取締りの抜け穴をかいくぐり、相変わらず密漁や密輸入が横行しています。
例えば、高級魚のウナギの稚魚(シラスウナギ)にしても、日本の24都道府県で2021年漁期に7トンのシラスウナギの採捕が報告されたのですが、実際の国内推定採捕量は11.3トンにもなったのです(水産庁調べ)。となれば、4.3トン分のシラスウナギが国内で密魚されたか、海外から違法で入ってきたとなります。
2020年7月から2021年5月までに、日本に輸入されたシラスウナギ9570トンのうち、約7割を占める6120トンの出どころは香港となっています。
さて、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、香港にはウナギの稚魚が遡上するような川はありませんよね。2007年までは、シラスウナギの最大の輸入元は台湾だったのですが、台湾はこの年に輸出を禁止してしまいました。それからは、日本へのシラスウナギは香港からとなります。それではどのようなカラクリになっているのでしょうか。
シラスウナギはいったん他国から香港に密輸入され、今度は香港から日本に再輸出されるという仕組みとなります。その手口を、日本のウナギ業者は知ってか知らぬふりかで、やり過ごしていると言えるでしょう。
ウナギは、国際条約の「ワシントン条約(CITES・Convention on International Trade in Endangered Species)」では、絶滅危惧IA類に指定されているので、いっさいの国際取引は禁止になっているのです。しかし、香港が持ち込んでいるのが、国際取引が禁止されている、いわゆる“ヨーロッパウナギ”という品種で、このヨーロッパウナギが香港を経由して日本までやって来るということになります(ちなみに日本原産のウナギは“ニホンウナギ”の種となります)。こうして、ヨーロッパからの違法輸出に始まり、香港へ密輸入、そして日本へと輸出されるいう展開になるわけです。
さらに、2010年にEUがヨーロッパウナギの輸出入を禁止してから、域内での取引は激減してしまったのですが、そもそもヨーロッパウナギの出どころは、モロッコやチュニジア産のものであったようです。そこで、今度はヨーロッパからの輸出ができなくなると、直接にモロッコ、チュニジアから中国に輸出されていることが分かってきました。これらの中国に輸出されたヨーロッパウナギの大半が、日本に再輸出されている実態があるのです。
世界経済のグローバル化は、国境を越えての物流を容易にしましたが、一方、国際的規模の密貿易の海産物も含めて行われるようになりました。日本は犯罪率が低い国と世界でも評判ですが、世界のウナギ密貿易に加担して世界のウナギを喰い荒らしていると言われても仕方がありませんね。