再びマグロのお話をさせていただきます。今年に入っても日本のマグロ漁業に関わる“悲しいニュース”が、絶えることはありません。
年明け恒例の東京豊洲市場における初競りへの高い注目度は、何と言っても青森県は大間港に水揚げされる本マグロ(Bluefin Tuna)に、メディアもこぞって集まります。
“大間マグロ”として、その名を世界に馳せて高級マグロブランドはしっかり定着しています。過去には、数億円の高値をつけたこともあり、世界を驚かせてきました。
ところが、今年2月7日に、青森県大間町の水産業者と漁師が漁業法違反で書類送検され、さらにこの事件に関連した容疑者が20名もあげられました。大間沖で漁獲していながら漁獲報告していなかったり、他の地域のマグロに大間まぐろのステッカーを張ったりの悪質な行為が発覚したのでした。この件は遡って2021年夏、漁師が漁業者と共謀してマグロ漁獲量のうち約18トンを漁協に報告せずに流通させていたのです。この他にも、マグロが資源管理の規制から逃れるために、県外へ“大間まぐろ”として流していたりしました。
青森県では2021年の1年間に、大間町の3つの漁協で少なくとも約60トンの本マグロを隠し報告しないまま流通させていました。いわゆる“脇売り”をしていたわけです。
大間のマグロを巡る逮捕劇を受け、日本水産庁も事態の深刻さと、対応の遅れに冷や汗を流していますが、日本政府は、こうした悪質なマグロ漁の横行は、国際的な信用を失うとして焦っています。
本マグロは回遊魚で、日本だけでなく海外も含めて資源評価を行った上で国際法もきちんとあるからです。資源枯渇だった大西洋マグロを完全復活させた欧米諸国には、水産国日本は顔も向けられない状態なのです。
日本にあっても、きちんと漁法や都道府県ごとの漁獲枠が定められていて、この漁獲枠を守るために漁業者による漁獲報告が定められているのです。
しかし、こうした事態が続くと、豊洲市場の仲買さんたちも「大間は大丈夫なのか」と不安がっているのです。実際に、大間の漁師ー水揚げ業者ー流通業者ー販売業者という不透明になりがちな構造が存在することは事実だろうと察します。
たしかに、ロマンを感じさせる冬の津軽海峡に乗り出す「大間まぐろ」の一本釣りは、厳しい自然を相手にしたドラマとして日本人の心を惹くところでしょう。しかし、極端で異常な一般消費者の「大間のマグロが1番!」という思い込みと、その心理を煽るバラエティ番組やメデイアが騒ぎ立てるのも問題かと思います。
さて、正直さを美德する日本人は、どこかへ行ってしまったのでしょうか。