2024年、年明け5日の東京豊洲市場のマグロ初競りは、4年ぶりの1億円超えとなりました。
初競りを制したのは、ホノルルにも店舗を展開する“鮨銀座おのでら”でした。競りはオノデラグループと共同している仲卸“やま幸”が行い、マグロは青森県大間産の238キロのマグロをキロ48万円で競り落としました。総額1億1424万円で、2021年から4年連続で競り落としたことになり、昨年の競り値の3504万からすれば3倍以上となりました。
競りは、午前4時10分恒例の新年挨拶の後、5時10分から整然と並べられたマグロを競り人の掛け声とともに始まって行きました。
こうした情景は、ハワイオアフ島ピア38にあるホノルル魚市場(Honolulu Fish Auction)でも見ることができます。ホノルル魚市場では、気軽に市場内に入って見学、写真撮影もできますが、豊洲市場の場合は、見学者は競り場の中に入ることできません。二階に設けられたガラス張りの“マグロ競り見学者デッキ”からとなります。
また、ホノルル魚市場の競りは、売り主に立つ競り人は、買い手がいなければ競り値を下げていくのに対して、豊洲市場では、買い手が示す指値で、競り人は上げていきます。どちらにせよ買い手(仲卸業者)同士の心理的な駆け引きと、売り手側の競り人(卸業者)は高く売ろうとし、買い手側の仲卸業者は安く買おうとします。いずれにせよ競りは、公開の方法を取りながら競争原理を用いているわけで、どちらが売り手側や買い手側にとって有利なのかは、とても興味深いところです。
ここで買い手のマグロへの“目利き”はさらに重要となります。
“目利き”とは、まずはマグロを知るために、釣った漁場、漁法の情報を得、そして眼の前のマグロ自体の鮮度、色目、脂ののり、キズや身割れ有無などなど細かに検品して行きます。さらにマグロの大中小を考慮します。マグロのサイズによって支払う金額も大きく違ってくるからです。たとえば、「欲しいマグロ一本を競り落として“良し”とするか、あるいは大きなマグロ一本だけ買ってリスクを取るよりも、小さめのマグロ二本を買っておくのか?」など。実際にマグロの良し悪しは、包丁をマグロに入れ解体してみないとわからないものだからです。
そこで、買い手は“下見”と言いますが、競りが始まる前にあらかじめ競り場に並べられているマグロ一本一本をしっかり品定めをしていき、ある程度の自分が入れる値も予想しておきます。
ホノルル魚市場も豊洲市場も、ガランガランと鳴る鐘の音とともに競りが始まり、その場は一気に緊張感が高まり、競り人の掛け声とともに盛り上がりを見せます。こうした現場での競り人の掛け声と買い手のやり取りで一瞬間に値段が決まっていきますので、誰が一番高い値を出して競り落としたかは、なかなか素人には分かりづらいものですね。
やはり、マグロの初競りは、新年を迎える日本独特の風物詩です。海に囲まれ海と共に生きてきた日本人ならではでしょう。マグロを追いかける漁師へも、そしてマグロ大好きなお客様への感謝の気持ちを現すお祭りなのだと思います。今年のご祝儀相場はとても盛り上がって終えたと思います。