日米の年金課税について
「二重課税を避ける手続き」と「年金所得の納税手続き」とを混乱されているケースがあります。その点についてご説明いたします。
二重課税を避ける手続き(日本の年金)
米国に居住し日本の年金を受給している方の所得税は、日米租税条約により居住国である米国で納付することになります。年金が日本の銀行口座に振り込まれていれも、米国に住んでいる限り米国で納付です。所が日本の年金は支給されるときに20%の所得税が自動的に源泉徴収されます。すると日本で20%の所得税が源泉され一方で米国で所得として申告すると二重課税となってしまいます。そこで、二重課税を避けるために租税条約上の手続きを踏めば、日本での源泉所得税を免除することになっています。
1.日米新租税条約(2004年7月発効)上の手続き
次の書類を日本年金機構に提出することになります。
①税条約に関する届出書
②特典条項に関する付表
③居住者証明書(U.S. Residency Certification、IRS発行Form 6166)の3種類です。居住者証明書はIRSのForm8802(IRSのHPから入手可能)に必要事項を記入して申請します。
2.書類の提出時期
これらの①~③の書類は、日本の年金を請求するとき、及びその後3年ごとに日本年金機構へ提出することになります。
3.提出省略ができる場合があります。
日本の年金を受給しても、日本の税法で源泉所得税を徴収されない金額の方については提出を省略することができます。提出省略の可能な源泉徴収されない年金額は次の通りです。
(1)65歳未満の方…年額60万円未満
(2)65歳以上の方…年額114万円未満(老齢厚生年金・老齢基礎年金合計)。
年金を受給している方については、3年ごとに日本年金機構から書類提出のお知らせが届きますが、年金額がこの基準以下であれば、源泉徴収はされませんので、提出の必要はありません。この省略によりForm6166の作成費用$85と手続きの手間が節約になります。
省略に該当される場合は、「租税条約に関する申出書」を提出し、日本年金機構に“私の年金額が源泉徴収対象額以下なので、租税条約に関する届出書等は提出しません”という意思表示をしてください。
年金所得の納税の手続き(日米の年金)
1.日米の年金の所得申請は日米租税条約17条により居住地で申告です。米国に住んでいる時、日本の年金を受給すれば米国で申告します。
日本帰国後は日本で申告となり米国で申告する必要はありません。ただ日本に住んでいる方が米国籍や永住権の保有者であれば日本での日米年金の申告に加えて、米国でも申告する必要があります。そうなると二重課税になりますので米国で「外国税額控除」の申請を行います。米国は「市民権課税」の原則を守るため「Saving clouse」を設けて、米国課税を行うようにしています。
日本で年金の収入を確定申告する場合、日米の年金ともに「公的年金等の雑所得」に該当します。年金額が源泉徴収の対象以下の場合に、年金に対する課税はなく、年金所得の申告を行う必要がないと誤解されがちですが、それは間違いです。ご注意ください。
2.日本の遺族年金・障害年金は日本においては非課税です。しかし、米国の遺族年金は米国では非課税扱いではありません。
また、国家公務員・地方公務員の退職共済年金につきましては租税条約上の源泉徴収免除の取り扱いはありません。年金額が基準を上回れば源泉徴収されます。
No. 93
市川俊治
民間企業勤務後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランティア制度の第1期生としてNY更にSF総領事館に合計6年間勤務。その官と民の経験・知識を基に海外在住者の年金・国籍・老後の日本帰国の問題のアドバイスを行っている。
海外年金相談センター
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