二酸化炭素を吸い込むコンクリート
地球温暖化の元凶は二酸化炭素と言われており、エネルギー消費やCO2排出量が議論を沸かせています。家庭でも電気、ガスと使われますが、これらのエネルギーを作っているコストやCO2の発生量はいかがなものでしょうか? まだまだ「火を燃やす」ことのコストへの魅力があります。が、温室効果ガス排出ゼロは全世界の願いです。今回は、このトピックを取り上げます。
石炭や石油の火力発電がよく話題になりますが、実は、建設資材のセメント製造が、CO2発生に大きく、関わっているのはあまり知られてはいません。不動産バブルは、経済だけではなく、地球温暖化にも関わっているのですよ! 工場などの施設から、発生するCO2を、空気中に逃がすのではなく閉じ込め、出来れば再利用するというのが理想なのです。もともと炭素と酸素の化合物(燃えた残り)なのですから、その存在は無視することはできません。
今回、高濃度のCO2をコンクリートに吸わせて、内部に固定するするという取り組みを鹿島建設がはじめたのです。建設資材の代表であるコンクリートは、砂や水とセメントを混ぜたものです。石灰石を高温度で処理をし、セメントをつくるのですが、コンクリート1立方メートルの製造過程で、セメント由来のCO2排出量は288キログラムにも登るのだそうです。セメント材料を変更することにより、CO2の排出を減らそうというのが、今回ご紹介する「CO2-スイコム」という新商品なのです。
CO2と反応し「炭酸化」することで固まる特殊な材料(γC2S)をセメントの代替材料に採用したのです。石灰石関係の素材を減らし、その処理過程でのCO2発生を大幅に減らします。結果セメント量は1/3に減り、残りのCO2排出量90キロ分を、新材料での炭酸化効果でCO2排出量をゼロ以下にするという「カーボンネガティブ」を実現したのです。
一般にコンクリートはアルカリ性で、内部に使う鉄筋などの錆を防ぐようになっています。しかし今回の試みは、逆に酸化を進めるとどうなるかと試したのです。その結果CO2の吸収を促進し、固定化が進み強度もやや高まるという結果を得たのです。
しかし、コストはこれまでのコンクリート製品は1キロ当たり30円なのに比し、100円程もかかるそうです。CO2削減も全界の目標ではありますが、実現はかなり難しいようです。
鹿島は「新エネルギー産業技術総合開発機構」の受託研究でこの開発を進めたそうです。炭酸ガスを吸収するコンクリートの市場規模は、2030年には15〜40兆円と予想されています。住宅やビル、橋などのあらゆる建設物のコンクリートが、炭酸ガスを吸収し固定する可能性を秘めているそうです。
No.299
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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