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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

マルコムX

「私には夢がある。いつの日かジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが兄弟として同じテーブルにつくという夢が」―人種差別撤廃を訴えた、キング牧師の演説の一部だ。しかし同時代、宗教や理念は異なるものの同じように果敢に戦った人物がいたことを、自分を含め若い世代や米国在住者以外はあまり知らないかもしれない。

 1940年代のボストン。アフリカ系アメリカ人のマルコムは幼い頃から聡明だったが、“黒人”というだけで職業選択を狭められ、列車で食べ物を売る仕事をしていた。ある日、バーでギャングのボスに気に入られて以来犯罪に手を染め、逮捕されてしまう。荒んでいたマルコムは、刑務所内で知り合った男にイスラム教と教養を教わり、出所後に“ネーション・オブ・イスラム”という組織に入団、白人社会を否定するスポークスマンとして活動にのめり込んでいく。

 5月末、白人警察官が、武器を持たず無抵抗だったアフリカ系アメリカ人を拘束し、必要以上に圧迫して死亡させた。それが発端となり始まった抗議デモや暴動は、まるで教科書で習った半世紀以上前の歴史、公民権運動そのものに映った。マルコムは劇中で“私はアメリカ人ではない。私はアメリカニズムの犠牲者となった2200万人の黒人の中の1人なのだ”と演説をしている。この一言は重く、計り知れない悲しみと怒りの感情が込められていると感じた。冒頭の穏健なキング牧師と比較されることが多く、確かに言葉は過激であるが、実際にマルコムが暴力的だったことはなかったという。彼はあくまで、聴衆の胸に刺さる言葉を選んでいただけではないだろうか。映画を通して今なお残る根深い差別問題の根底が見えた気がしたと同時に、日本人だからあまりピンと来ない、という考えではいけないと痛感した。

 クリスマスにはまだ早いが、ふとジョン・レノンの“Happy Xmas(War Is Over)”の歌詞が思い浮かんだ。肌の色に関係なく、皆が願えば争いは終わる、と。

加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/色んな国へ旅をしましたが幸い差別を受けたことがなく、逆にどの国でも親切にしてもらったくらい。だから自分も日本人として、海外から来るすべての方に分け隔てなく親切にしたいと思うのです。

 

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