日本は4つの比較的大きな島で構成されている島国である。そしてこの4つの島の周囲には、多くの小さな島々が点在している。中でも、実際に人間が住んでいる小さな離島は約400個あるといわれている。
時代が進むなかで、人々の趣味や嗜好も変化しつつある。賑やかな大都市に住むのを好む人もいれば、静かに孤独な日々を送りたい人もいる。これが現代人の自由で多様、かつ複雑な社会生活の営みである。しかし人間が生きて行くには、生命維持に必要とする食料などの絶え間ない提供が必要となるのは言うまでもない。
例えば主要諸島の一つ、日本列島の西にある四国、香川県三豊市須田港に、ドローンを利用したベンチャー企業「かもめや」がある。この企業の主な事業は、4キロ先に浮かぶ離島―粟島に、ドローンを利用して荷物を島に運ぶ定期配送便を飛ばすことである。ドローンを利用して、郵便物など様々な小型の荷物の配送をする運送会社は、先進国ではもう珍しい事業ではなくなっている。しかし、人々が居住する多くの小さな離島で、ドローンを利用して定期配送便の運営を正式に事業として展開している例は、まだ多くない。
離島の一つ、風光明媚な瀬戸内海、香川県粟島の人口は170人に過ぎない。島にはコンビニが一軒しかない。配送料は1回500円。客は正午までに電話などで注文すれば、その日のうちに商品を受け取れる。勿論天候が良好であれば、のことである。注文できる品物は地元コンビニが扱うカップ麺や菓子、ペットフードなど約40種類、1回につき重さ1キロまでに限られる。
この運送業者「かもめや」の経営者は地元三豊市の出身で、離島を訪れた際、ドローンを使って住民に生活の必要物資を送れば、きっと離島に住む人々の生活改善に役立つであろうと思いつき、ドローンの機体構造の学習から始めたという。目下の課題は雨と風の影響で就航率が2割程度にとどまっているのが、最大のネックとなっている。重さ5キロが荷物の最大運搬能力であるが、天気に左右されない新機体の開発が、当会社にとっての開発目標であるという。
この国のもう一つの特徴は、陸上の高低差が厳しく、森林地帯が各地に広がっていることだ。その代表的なのが、森林地帯が95%を占める地域が8つの集落にある、山梨県北東部の小菅村である。ここには約700人の人々が、村内に分散して住んでいる。このようなところにドローを飛ばすのが最も理想的だと思ったのが、東京のベンチャー企業「エアロネクスト」CEOの田路圭輔氏である。今年の9月から現地のスタッフと打ち合わせをし、10月から本格的にドローを飛ばして、人々の買い物を代行するサービスを始めることにした。空き家を改造し、食品や日用品など約300種類を常備し、小型物流拠点を目出度く開店したのである。
このようなドローンを使って離島や山間部に住む人々に生活の利便性を提供する新商売が、日本では本格的に始まったばかりである。この新事業が軌道に乗れば、将来わが国の海岸や山間部には、常に大小のドローンが秋の赤とんぼのように津々浦々全国に飛び回ることになるのかもしれない。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.219
早氏 芳琴