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今どきニッポン・ウォッチング

巨額の後継捕鯨母船の建造は必要?

巨額の後継捕鯨母船の建造は必要?

 日本人は古代から、つい最近までの長い期間に、クジラの肉を食べる食慣習があったことは、かなり広く知られている。その後、クジラの肉を食用にするのは、動物愛護や環境保護の立場から好ましくないと、多くの国々に反対され、やむなく、クジラの生態調査・研究のためと言う目的で、クジラの少量捕獲を行ってきた。

 日本は1951年に、第二次大戦後の1948年に発足した国際捕鯨委員会(IWC)に加盟した。IWCは資源管理を基に1982年には商業捕鯨を禁止した。我が国としては、1987年から行ってきた調査捕鯨の結果を踏まえて、2018年に商業捕鯨の再開を提案したが、反対多数のために認められず、IWCを脱退した。そして、国際的に激しい反対の中で、わが国は商業捕鯨の伝統をもつ国々とともに商業捕鯨の道を歩むことになった。

 そこで、日本が本格的に捕鯨事業を再開するにはどうしても、先ず捕鯨母船の建造が必要となってくる。かつて、日本を代表する捕鯨母船は「日新丸」(8千145トン)の大型船があったが、既にかなり老朽化しているため、新型の捕鯨母船の建造が必要となっている。

 後継の新捕鯨母船を建造することを決定した共同船舶社は、建造費を約60億円と見積り、国の補助金を使わず、2022年春を目途に入札を行い、建造業者を選定し、2024年3月の就航を目指すと発表した。

 船体の大きさは大型クジラを捕獲できる旧日新丸と同程度の大きさでは、水産庁の非公開の検討会においては、建造費が約100億から170億円はかかると試算されている。しかし、共同船舶社によると、「この船は基本的に日本近海で操業するのが主目的であるため」船の出力を押さえることにすると、建造費は半額程度で出来上がるという。この新しい日新丸は捕鯨船団を指揮したり、船内に捕獲したクジラを収容し解体したりする母船でもあるため、当面は日本の排他的経済水域(EEZ)でニタリクジラやイワシクジラを捕ることになる。

 水産庁は商業捕鯨の再開後も、当分は年間約51億円の予算を計上する予定であるという。当予算は、捕鯨の他にも、南極海の資源調査や捕鯨母船の毎年の修繕費等にも使う予定とされている。共同船舶社としては、母船の建造費は自力で調達し、公費の補助金頼みを回避したい意向ではあるが、果たしてそれでできるかどうか、建造の道のりはかなり険しいとみられている。

 日本は確かにクジラを食用にしてきた食の慣習が長く続いた。なかでも第二次大戦後の食糧難の1940年代末から60年代半ばまで、日本人の主なタンパク源はクジラの肉であったと言われた。今日、日本はすでに経済的に豊かになり、食料事情は充足していると言えるし、先進国として他の途上国にも食料の援助をしている状況である。したがって現在はクジラの肉を食用にする必要は全くなくなっている。識者の中からは、日本の捕鯨の慣習は今後10年以内には、必然的に自己消滅する可能性が十分ある、との見方も囁かれている。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.206

早氏 芳琴

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