東京オリンピックの聖火採火式が2020年3月に福島県のサッカーナショナルトレーニングセンターJヴィレッジで行われ、聖火が採火された後、日本の聖火リレーチームが2011年3月の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域を走る。そして4カ月後の7月には最後の聖火ランナーが東京のオリンピックスタジアム開会式会場に到着しオリンピックが開幕され、福島市の吾妻スタジアムでは男子野球と女子ソフトボールの6試合が行われる。近い将来、今度はこれらの嬉しいニュースで福島が全国的に大きな話題になることだろう。
福島県に関するオンライン記事の多くは古い情報で、そこから現在の正しい情報得ることができないことを知った私は、福島滞在の10カ月間の自分の任務の一つを福島県の復興に関する最新情報を調査し、学んだことを一般の人々に説明することとした。この記事では、福島県の現在の状況に関する最新かつ正確な情報をどこで入手できるかなど福島滞在中に得た情報源を紹介する。
■オンライン
10カ国語で書かれた再生関連情報のオンラインレポートが閲覧できる県のホームページ「ふくしま復興ステーション」に福島の復興への歩みは掲載されている。このウェブサイトは、数十の公式情報源からの情報を統合したもので、福島の復興について学び、すでに知っている情報を更新するのに最適なサイトになっている。ウェブサイトには、復興に関する興味深いさまざまなトピックの詳細な情報を提供する他のサイトへのリンクもある。このオンラインレポートでは、福島県内の放射線量の現状、農産物や魚の放射線検査の結果、子どもたちの甲状腺超音波検査の状況、復興や原子力施設の廃炉などのために資金が投じられた被災地での事業や産業の振興計画などについての説明がなされている。年に3回ほど更新されているこのレポートは福島の復興に対する人々の考えをまとめるのに非常に役立っている。
セーフキャストとは福島県内のさまざまな場所でリアルタイムの放射線測定を行っているオンラインサイトで、福島の放射線リスクを心配する人々にとって素晴らしい参考サイトとなっている。この種の放射線データバンクとして国際的にも最大のものとなっているこのボランティア組織は2011年3月の原発事故後、福島の放射線データを収集するために開始され、放射線データの監視、市民へのデータ公開の他に自分でガイガーカウンターを作る方法も教えてくれる。私はセーフキャスト福島の放射線測定値、自分自身の線量計の測定値、そして政府が公表した放射線測定値を比較し、3つの測定値がすべて同じであることを発見した。セーフキャストは、福島の放射線リスクについてまだ不安を持っている人々のためのオンラインサイトだ。
2020年東京オリンピック野球・ソフトボール競技大会の開催地、福島県営あづま球場にて
■福島県内の情報拠点
「環境再生プラザ」は、福島の復興状況を最も包括的に紹介し、見学者がさまざまな環境回復のトピックやプロジェクトについて学ぶことができる日本初となる施設。環境省の管轄下にあり、2011年3月の原発事故後最初に一般に公開された災害情報オフィスで福島駅東口から徒歩5分の場所にある。外国語を話す技術アドバイザーが常駐している同プラザでは原子力災害の歴史、すでに完了または現在進行中の多くの環境再生プロジェクトを理解することができるビデオ、模型、イラストなどの展示物やグループ学習の教室などがある。
技術アドバイザーにより放射線の性質や政府の除染プログラム、原子力発電所廃止措置に関する話題、核燃料の取り出しやタンクに保管されている「トリチウム水」の管理、福島第一原子力発電所周辺の帰還困難区域の再建・再居住計画、福島第一原子力発電所事故後に県内全域に備蓄された除染廃棄物が入った「フレコンバッグ」を管理する中間貯蔵所計画の状況について説明がなされる。
福島県三春町にある情報施設[福島県環境創造センター (通称:コミュタン福島)」は、郡山市から東へ車で約30分、福島市から南へ約45分の場所にある。コミュタン福島には360度全球型シアターがあり、遊びながら子どもたちが放射線や環境について学べる施設としても知られている。大人の見学者からもコミュタンの展示物から多くのことを学んだと絶賛されている。
福島県双葉郡富岡町にある「東京電力廃炉資料館」は、第一原子力発電所の原子力事故とその廃炉プロセスの技術的側面と詳細を学ぶのに最適な場所であり、2011年3月11日に発生した東日本大震災と発電所を襲った津波の映像上映、核燃料の過熱と水素爆発の状況を見ることができる。
「ふくしまイノベーションコースト構想」は大震災、津波、原子力災害で壊滅的な被害を受けた福島県沿岸部とその周辺に新たな産業基盤を構築するための国家プログラムであり、そのフレームワークになる5つの重点分野には、ロボット工学、エネルギー、廃炉、農林水産業、環境・リサイクルが含まれている。各重点分野を支援する新しい施設がすでに建設され、今後もさらに新たな建設が予定されている。対象業種が短期的に沿岸部を活性化・維持するための事業基盤や、避難住民及び復興地域に移住したいと考えている人々のための雇用を創出するとしてこのプログラムは期待されている。福島イノベーション・コースト構想の対象となる産業・事業施設については以下で説明されている。
南相馬市にある「福島ロボットテストフィールド」は、世界最大級の研究開発拠点であり、2019年12月現在、新規施設の大半が完成している。2020年3月までに全体が完成し、2020年5月にはロボット・テスト・フィールドがグランドオープンする予定だ。本館には十数社の企業が入居し、新しいロボット製品の開発が行われ、ロボットテストフィールドは無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットなど陸・海・空のフィールドロボットの研究開発拠点となる。
廃炉技術の基礎を開発する国の研究機関である日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営している「楢葉遠隔技術開発センター(モックアップ施設)」では、福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた遠隔制御技術の研究・実験を行っている。見学者はモックアップ施設で三次元を再現するメガネを装着して仮想空間で原子炉建屋内にいるような立体感が味わえ、使用済み核燃料を水中で見つけるなどの体験ができる。
福島市環境再生プラザの技術アドバイザーと共に
2020.1.28
スティーブ・テラダ
日系三世のアメリカ人で、祖父母が112年前に熊本からハワイに移住。ワシントン州シアトルの米国陸軍工兵隊・不動産部門のチーフを退職。在日米軍の不動産部長として東北から広島までの米軍基地の不動産管理に当たっていた。
陸軍を退職後、災害管理援助のため1年間の予定で福島に移住。現在も福島が「悪評」に苦しんでいることを知り、地元の人たちから福島の実態を世界に知ってもらうために、第三者的視点でストーリーを書いてほしいと頼まれたことから事実の伝達者として1年間のビザを取得。現在調査と執筆のため、福島県福島市に在住。
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