日刊サンWEB|ニュース・求人・不動産・美容・健康・教育まで、ハワイで役立つ最新情報がいつでも読めます

ハワイに住む人の情報源といえば日刊サン。ハワイで暮らす方に役立つ情報が満載の情報サイト。ニュース、求人・仕事探し、住まい、子どもの教育、毎日の行事・イベント、美容・健康、車、終活のことまで幅広く網羅しています。

デジタル版・新聞

大好きは魔法の言葉

神戸の地震

神戸の地震

 26年前、神戸で大きな地震が起きた朝のことでした。テレビを見て、地震が大きそうだということはすでに知っていても、まだ情報もよくわからず「けがをした人がいないといいけれど」と私はのんきなことを考えていました。でも大ちゃんは学校へ来るなりこう言いました。

「けさの地震すごかったな 美浜の人は 地震も火事も台風も 何もおこるなと思っとるやろな」

 前の年に原発のことを一緒に勉強したときに、チェルノブイリでおきた事件のことや、原発の近くに住んでいる人たちの不安についても勉強したので、大ちゃんはそのことを覚えていたのだと思います。まだ誰も地震と原発について報道していないとき、大ちゃんは真っ先に感じていたのだと思います。また「地震の神戸、赤ん坊にお湯もってったり、ミルク持ってったり。俺のとこにもな、今度赤ん坊が生まれるんや」と言いました。

 何か大変なことがおきるとまっさきに赤ちゃんや弱い人が真っ先に犠牲になってしまうということを大ちゃんは知っていたのです。

 大ちゃんも学校で分けられてこの学校へ来ていたり、その他でこかで分けられていたりして、もしかしたら自分のことを弱い立場にいると感じているのかもしれません。だからこそ大ちゃんは他の人の心の痛みがわかるのではないでしょうか? それなのにわたしったら、朝からテレビにしがみついてちっとも勉強をはじめようとしない大ちゃんに少しあきれて「大ちゃんいいかげんテレビはやめて勉強しようよ」と言ったのです。

 こんなことを言う私に大ちゃんは「今神戸のことを知るのが一番大事や」って言いました。そして「日本中のみんな、悲しみでいっぱいやから。俺、勉強もようできん」と言いました。

 たとえしばらくたってから(今私に何ができるんだろう)と考えていたとしても、私にはやっぱり神戸の地震は大ちゃんほど深く考えていなくてよそごとという思いがその時はあったのかもしれません。

 

 このことをフェイスブックに書いたら、以下のコメントをいただきました。

 

「26年前、私は6歳でした。当時私は大阪に住んでいたのですが、大きな揺れにとても驚き、とても怖かったことを覚えています。

けれどもっと鮮明に覚えている出来事があります。それは、幼稚園の先生に『地震で被害はなかった? 大丈夫だった?』と声をかけていただいたときに、『全然怖くなかった、飛行機に乗ってるみたいで楽しかった』と、強がって答えたときの幼稚園の先生のなんとも言えない強ばった表情です。その後、震災の規模、状況を幼いながらに理解し、幼いながらに自身の発言に心を痛めたことを思い出します。他人の痛みに自分の心をどう重ねることができるのか…。常に大切に思いたい私自身の教訓です」

 

 私も他の人の痛みに自分の心をどう重ねられるかを考えていきたいと思いました。

山元 加津子

1957年石川県金沢市生まれ 富山大学理学部を卒業後、特別支援学校の教員と、作家活動をしてきたが、2014年に教員をやめ、2012年に立ち上げた障がいを持つ方もそうでないかたもみんなで幸せになろうと「白雪姫プロジェクト」を立ち上げ、その中で意識障害の方の回復の方法と意思伝達の方法などを伝えている。

http://shirayukihime-project.net

シェアする

Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
Twitter
Visit Us
Instagram