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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

恋する惑星

「尖沙咀(チムサーチョイ)の本屋の店主、急にいなくなったらしいんだよ。連れていかれたって」。香港に旅行中、駐在員から聞いた話だ。ニュースで女優のファン・ビンビンが消息不明になったと知った直後だったので、少しゾッとした。

 香港の繁華街、九龍地区。失恋したばかりの若い2人の警官、223号(金城武)と633号(トニー・レオン)は、それぞれ別れた彼女を忘れられずに生活していた。しかし、223号は雑居ビル“重慶大厦”でビジネスをするミステリアスな金髪の女性と、633号は持ち帰り専門飲食店で働くフェイという女性店員と出会い、そのときめきや、すれ違いといった恋模様をポップに描く。

 別れた後、元彼女を想って落ち込んでいるなんて女々しい、と普段なら思ってしまうが、その様子が2人ともなんとキュートなこと!彼女の好きだった物をひたすら食べ、挙句やはり終わりなのだと悟ってバーで酒浸りになり、かたや彼女が部屋に残していった物が捨てられず、使っていた石鹸にまで話しかける始末。その描写はとてもシュールなのに、あまりにも不憫で愛おしさすらこみ上げる。そして、全編に広がるエネルギッシュでカオスな街並みと、溢れんばかりの多国籍な人、人、人!映画は1994年製作、イギリスから返還されるよりも前の香港だが、2年前に訪れた時の活気と何ら遜色はなかった。実は、本作を観てから“重慶大厦”に憧れ、あの雑多な、怪しげな魔窟にいつか足を踏み入れてみたいと願っていた。が、実際に訪れた時には犯罪の香りは全くせず、クリーンで安全な場所に変貌していた。両替所や、インド、中東料理の持ち帰り店が並び、みんなニコニコと話しかけてくる。がっかり感は否めなかったが、もちろん治安がいいのが一番だ。

 先日、“香港国家安全維持法”が成立した。デモはもちろん、SNS上での政府批判は禁止、外国人にも適用されるという。冒頭の噂話の信憑性が一気に増した。どうか、2年前の自由で活気溢れた香港のままでいて欲しい。

加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/未だ先が見えない2020年。自分が出来ることは何なのか日々悩んでいますが、久しぶりにこの映画を観てちょっと元気をもらえました。

 

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