今持つべきもの の話
12月も半ば。1年がもう終わろうとしています。ハワイにいると、一年中暖かいせいか、あまり年末感がないのですが、もう2020年も終わります。今年もまだまだやり残したことがたくさんあるような気がするのですが、容赦無く時間は過ぎていきます。今年こそダイエットを成功させたい、車をうまく運転できるようになりたい、泳げるようになりたい、本をたくさん読みたい……思い返せば、「今年こそ」がたくさん残っていて、なんとも情けない気持ちです。
とはいえ、今年は予想だにしない一年でした。コロナで生活は一変し、やりたくてもできないことに悶々とする毎日でした。先の見えない不安な日々をなんとか凌いでいくので精一杯。目に見えないウイルスに怯えながらも、ようやく2020の幕引きまでたどり着きました。気持ちが落ち込むことも多々あり、将来への漠然とした不安に押しつぶされそうにもなりました。それでも、なんとか踏みとどまっているのは、柄にもなく大掃除した際に発掘した一枚の手紙のおかげかもしれません。
それは、私が15年以上前に小学校のタイムカプセルに残した、未来の私への手紙。そこには、こう書いてありました。「小説家になりたい。なれているといいな。もしなれていなくても、毎日楽しく幸せに暮らしていてほしい。強く、強く生きていてほしい」。12歳の私が未来に託したその言葉に、ハッとさせられました。まだ、何も知らなかったあの頃の無垢な自分が、未来を思って綴ったその言葉。残念ながら小説家にはなれていないことはともかく、かつての自分に恥じるような生活しかしていないではないか、と。
毎日楽しく幸せに暮らす。その基準は、人それぞれです。けれど、私は衣食住に困ることもなく、励ましあえる家族や友人に囲まれています。自分なりの夢もあり、それに向かって進んでいく環境にも恵まれています。それだけで、本来なら十分幸せだったはず。コロナへの恐怖や不安はそれを忘れさせてしまったのです。それに気付いてからは、たとえ何か生産的なことができなくとも、毎日楽しんで生きていこうと誓ったのです。
これから先のことは、誰にもわかりません。もしかしたら、コロナの特効薬が発明され、もう怯える必要もなくなるかもしれません。もしかしたら、まだまだこの状況が続いていくのかもしれません。それでも、いつか、また元どおりの日々を過ごせる日まで、希望を持ち続けていくしかないのです。
今年も、例年通りに煌々と輝くホノルル・シティライツのクリスマスツリー。一際輝いているのは“HOPE”のイルミネーション。私はそのたった一単語が、一人でも多くの方の心を照らしてくれるとことを願ってやみません。
CAN OF ALOHA No.44
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_channel をご覧ください。