あこがれのおはなし
私が小さかったころ、夕方になるとNHK教育テレビ(今は名前すら変わってしまい、Eテレというそうです)にチャンネルをセットして、今か今かと待っていた番組があります。それは、『フルハウス』。アメリカはサンフランシスコを舞台に、妻に先立たれた男・ダニーが、妻の弟や友人の手を借りながら、慣れない三人姉妹の育児に奮闘する話です。なんて説明する必要もないくらい有名ですよね。末っ子・ミシェルを演じたオルセン姉妹を一躍スターに押し上げたドラマとしてもよく知られています。笑いあり、涙ありのこのドラマ、私はかじりつくようにして見ていました。
家族の在り方や友達とのかかわり方などの大切なことも教えてくれたこのドラマですが、私はこのドラマで「アメリカ観」を培ったといっても過言ではありません。ありきたりですが、「家の中でも靴を脱がないのだ」「学校には私服で化粧して行ってもOKなんだ」「お仕置きは『家から出ていけ』ではなく『部屋から出るな』なんだ」など、日本から出たこともない私に憧れと驚きを与えてくれたものです。
時は流れ、色々あってなんとその憧れのアメリカに漂着してしまった私は、再度『フルハウス』を見るようになりました。今度は英語の勉強のために。家族向けドラマなので、きれいな英語をゆっくり話してくれる『フルハウス』はまさに最高の教科書。何度も繰り返し見て、セリフをまねして、耳と口を鍛えるのに大変お世話になりました。
そしてさらに時は流れ、今、私は続編の『フラーハウス』に夢中です。オリジナルではまだティーンだった長女・DJが夫を亡くし、三人兄弟を連れて実家に戻ってきて……というお話。年を重ねた懐かしの面々を見ているだけで胸が熱くなりますが、私も同じだけ年を重ねたせいか、すべてのエピソードで一度は涙する始末。いっこうに進みません。あまりにも泣くので、1日2エピソードまで、と決めています。
アメリカ生活も長くなり、時々日本が無性に恋しくなることがあります。特にコロナ禍にあっては自由に行き来もできず、寂しい思いをすることも増えました。しかし、そんなときに元気づけてくれるのは、「いつかこんな生活をしてみたい」と思わせてくれた、画面の向こうの三姉妹たちとの思い出なのです。いつか『フルエストハウス』なんてドラマが出る日を心待ちにしながら、今日も憧れの異国の地で頑張っていこうと思います。
CAN OF ALOHA No.63
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。