吉野川遊園地、それはかつて徳島県に存在した遊園地。幼い私にとっては、「たまにある楽しいお出かけ」の行き先であり、思い出の詰まった場所なのです。悲しいことに、いまはもうなくなってしないましたが、あの時の記憶は今でも胸に染み付いていて、昔のことを思い出すたびに登場する場所でもあります。 

　遊園地、と言ってもディズニーランドのようにかわいいキャラクターたちに会えるわけでもなければ、富士急ハイランドのようにスリル満点の乗り物があるわけでもありません。いわゆる、地方の遊園地、その地域の子供達を喜ばせるだけの場所。乗り物はジェットコースターや四国最大級を謳う観覧車、バイキング、ぐるぐる回る大きなブランコ、メリーゴーランドにゴーカート。１日あれば十分に全ての乗り物に乗ってしまえる広さでした。 

　そのほかにも、遊園地のイメージキャラクターでもある鯉がうようよ……失礼、たくさんいる池の上にかかった橋でできた迷路。釣れた試しのない釣り堀。そういえば足こぎボートもありました。結構疲れるんですよね、あれ。そういえば、園内のゴミ箱は全てペンギンの形をしていて、はしゃぐ子供達をまっすぐな目で見つめていました。 

　レストランは、まさに昔ながら、といったもの。カレー、ラーメン、カツカレー……B級、とでもいうのでしょうか。まるで深夜のサービスエリアのようなノスタルジーを感じられる佇まい。特段味が美味しかった記憶はないのですが、遊び疲れたころに買ってもらえるソフトクリームの美味しさは格別。 

　このコラムを書くに当たって引っ張り出してきたアルバムには、ソフトクリームにかぶりつく私と、まだベビーカーに乗っている妹の写真が出てきました。そんな妹も、いまでは我が子を乗せたベビーカーを押す立場に。時間というのは、こんなにも早いものなのでしょうか。まだ、あのとき、観覧車に乗せたら泣いてしまったこと、ジェットコースターの出口でニコニコ笑顔で私を待っていたことを鮮明に思い出せるというのに。 

　うっかり感傷的になってしまいました。かつての思い出の場所がどんどんなくなることは、寂しくて仕方ないのですが、それもまた運命、そして時の流れ。知っている人の胸にだけにしまわれ、語り継がれていくことでしょう。語ろうと思えばまだまだ語れるのですが、いつまでたっても終わりそうにないので、今回はこの辺りにしておきます。吉野川遊園地、永遠なれ、私の中で。