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デジタル版・新聞

木村伊量の ニュースコラム

灼熱化する わたしたちのチキュウ

サラリーマンだった父の転勤に伴って、わたしは小学校の低学年を四国の徳島、九州の太宰府、佐賀と西日本で過ごしました。その頃に描いた「絵日記」の一部が押し入れの隅に残っており、久々にパラパラめくるうちに、考えこんでしまいました。

毎日の天気と気温を記入するのですが、夏の盛りでも摂氏28度くらい。たまに30度にもなると「記録的な暑さ」。そんな日は、川や学校のプールにつかり、冷えたスイカやかき氷で涼をとらないと、やり過ごせなかったっけ。

それから、ほぼ60年。いまや日中の最高温度が体温を超えて、39度や40度の「猛暑」になるのも珍しくないというのですから、ちょっと異常ですね。日本に限りません。最近のニュースでは、地中海に浮かぶイタリアのシチリアで摂氏48.8度というヨーロッパでの最高温度を記録したそうです。

もう、地球温暖化なんてなまやさしいものじゃない。地球灼熱化(しゃくねつか)と呼んだ方がふさわしいかもしれません。

地球温暖化はわりと最近の議論で、18世紀から19世紀にかけてのフランスの数学者で物理学者のジョゼフ・フーリエの観察がきっかけになった、と言われます。でも、1970年代には、「核の冬」を警告してテレビでもおなじみの天文学者カール・セーガン博士が、なんと温暖化どころか、森林の伐採によって、これからは「地球の寒冷化が進む」と予言していたくらいなのですね。

地球の歴史には長いサイクルがあり、大昔の5500万年前には北極海の水温が摂氏23度まで上がり、北極海をワニがうようよ泳ぎ、地球全体が熱帯のようだっただろう、とみる研究もあるのです。「中世温暖期」と呼ばれた時期には、いまは氷に覆われるグリーンランドはその名の通り、緑が生い茂り、スカンジナビア人たちが移住しました。

ところが、近代になるとヨーロッパの気温は一変します。わたしの好きな農民画家に、オランダのピーター・ブリューゲル父子がいます。ブリュッセルの王立美術館や、ウィーンの美術史美術館で作品に見入ったものですが、1565年に父ブリューゲルが描いた風景画に『雪中の狩人』があります。犬を連れて村に引き上げる狩人たち。遠くに見える氷が張った池では、村人がスケートに興じています。そのころ、英国ロンドンのテムズ川も凍りつきました。

現在はその延長で、気候的には間氷期がすでに1万年を超えていて、いつ本格的な氷河期に突入してもおかしくなく、「21世紀半ばには小氷河期を迎えるだろう」と主張する学者だっているのです。

えっ、頭が混乱してきますよね。いったい、どういうことでしょう?地球は寒冷化しているの、それとも温暖化しているの。はっきりしてよ!

実は、本当のところは、よくわかりません。でも、短いスパンでは、人間の産業・経済活動によって二酸化炭素の排出量がかつてないレベルに達し、危険なまでに温暖化を進めてきていることは、疑いがなさそうです。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月9日、地球温暖化の科学的根拠をまとめた報告書の最新版(第6次評価報告書)を公表しました。今後20年以内に、産業革命前からの気温上昇が1.5度に達する可能性があると指摘。温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることについて、「疑う余地がない」とこれまでにない強い表現で断定しました。

ここまではっきり言われれば、さすがに勝負ありでしょうか。ともかく、温暖化・灼熱化を食い止めることに、人類がもろ手を挙げて取り組まなければならない。石炭、石油に過度に依存した「メタボ」体質を脱し、温室効果ガス、つまりは二酸化炭素を出さない水素ガスへの転換など、社会と産業のありかたが問われているのですね。

それはわかります。でも、わかるようで、科学にうといわたしには、いまひとつ腑(ふ)に落ちない。「低炭素社会をめざす」といっても、二酸化炭素がなければ植物は光合成ができず、いのちをつなげないじゃないですか。

植物はもの言いませんが、太古以来、炭素循環によって地球の大気は妙(たえ)なるバランスを保ってきました。低炭素社会は、ほんとうに「エコフレンドリー」か。議論はまだまだ尽くされていない気がします。

(日刊サン 2021.08.23)

木村伊量 (きむら・ただかず)

1953年、香川県生まれ。朝日新聞社入社。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、ワシントン特派員、論説委員、政治部長、東京本社編集局長、ヨーロッパ総局長などを経て、2012年に代表取締役社長に就任。退任後は英国セインズベリー日本藝術研究所シニア・フェローをつとめた後、2017年から国際医療福祉大学・大学院で近現代文明論などを講じる。2014年、英国エリザベス女王から大英帝国名誉勲章(CBE)を受章。共著に「湾岸戦争と日本」「公共政策とメディア」など。大のハワイ好きで、これまで10回以上は訪問。

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