日刊サンWEB|ニュース・求人・不動産・美容・健康・教育まで、ハワイで役立つ最新情報がいつでも読めます

ハワイに住む人の情報源といえば日刊サン。ハワイで暮らす方に役立つ情報が満載の情報サイト。ニュース、求人・仕事探し、住まい、子どもの教育、毎日の行事・イベント、美容・健康、車、終活のことまで幅広く網羅しています。

デジタル版・新聞

木村伊量の ニュースコラム

【ニュースコラム】新春特別企画 日刊サン読者限定「世界トイレ事情!」

うーん、新春早々から、こんな枇榔(びろう)な、トイレにまつわるウンチク話をしていいものでしょうか。ただいまお食事中という方、そんなお下劣な話なんか聞きたくもない、とおっしゃる方。どうか、今回のコラムをこれ以上読み進めるのはおやめください。わたし、責任がとれません。

昔、新聞社の先輩記者から「海外に旅をしたら、街の市場とトイレの事情をまず探る。それが、その国のインフラと暮らしの実情を理解する早道」と教えられました。この教えを忠実に守り、わたしも行く国の先々でトイレ事情を克明に観察(事情が許せばカメラで撮影も)してまいりました。

そこで、きょうはわたしが実際に体験した「突撃ルポ 驚きの各国トイレ事情」を、親愛なるサンの愛読者の皆さま限りで一挙特別大公開!

中国 1990年代の初め、観光バスで上海の人民公園の公衆トイレに立ち寄ったところ、その光景にド肝を抜かれました。土間に幅、深さとも20センチほど(未確認)の溝が数本掘られ、男性数人がしゃがみこんで、その溝にまたがり、大小の用をたしているではありませんか。丸見えの格好で、みんな手にした新聞を読んでいます。えーい、郷に入れば郷に従え。わたしもズボンをおろし、日本から持ち込んだ新聞を手に溝にまたがりました。

すると、向かい合っていた男がしゃがんだまま、じわじわとにじり寄り、わたしの新聞をのぞき込みながら、何かぶつぶつ言い始めました。これでは、出るものも出ません。後でガイドさんに聞いたら「ニーハオ・トイレ」というのだそうです。最近、たまたま人民公園のテレビ映像を見たら、トイレの外観は清潔でピカピカ。東京と変わりません。中国の経済発展、おそるべし!

インド 学生時代に貧乏旅行をしました。南部のある町の「〇〇国際ホテル」と、名前だけはたいそうなホテルのトイレに啞然。部屋の真ん中にオリンピックの表彰台、というより死刑台みたいなセメントでできた台がしつらえてあり、四方から数段の階段(13階段ではありませんでした)をのぼって、真ん中にあいた穴の中に爆撃するのです。ごていねいにも、天井からは一本のロープが下がっています。これは手にもって「ふんばる」ためのもの。台の下には汲み取り用のバケツが置かれているということでした。

ボンベイ(現ムンバイ)で帰国のためタクシーで空港に向かったところ。運転手さんが断りもなく車を止めると、近くの草むらにしゃがみこんで用を足し始めました。おまけに、こちらに向かって歌まで歌い始めます。ようやく帰ってくると、破顔一笑、「No Problem(問題ないよ)」だって。問題だらけの国でした。

フランス 自民党のドンに同行してパリの凱旋門に近い豪華ホテルに投宿した時のこと。便器の近くに「C」と書かれていたボタンを押したら、熱湯が出てびっくり。「C」はColdではなく、フランス語のChaude(熱湯)でした。某新聞社の記者は「ビデ」の意味がわからず、「そうか、さすがに文明国フランス。大と小は別々の便器か」と早合点し、大を放出。あとで、ホテル側からたいそうな額の請求書が届いたそうです。

旧ソ連 1980年代半ばのチェルネンコ書記長時代。野党の訪問団に同行してモスクワの格式ある高級ホテルに滞在しました。トイレはふつうの洋式なのですが、便器に紙を流すと詰まる、ということで使った紙はそばの1メートル四方のボックスに投げ込んでいきます。ところが、なにごとも非効率でサービス精神ゼロの旧ソ連では、メイドさんがボックスの交換などしてくれない。

数日たって、さすがに耐えがたくなり、年配のメイドさんに、土産(袖の下)用に買い込んできた日本製のパンティストッキングを進呈したところ、効果はてきめん。すぐに交換してくれました。それから2、3時間おきに「ボックスは大丈夫?」と部屋のドアをたたかれるのには閉口しましたが。

オランダ 「劣等感」にさいなまれたのはアムステルダムのスキポール国際空港のトイレでした。男性の小便用の便器は高すぎて、背伸びしないと届かないし、大きい方の用を足そうとすると、便座から床に足がつかず、何とも力が入りません。オランダには長身で体格のいい人が多いのですが、こら、あんたら、自分たちが「国際標準」と思っておるのかね。いまでも、電車に乗って、小さなお子さんが座席から床に届かない足をブラブラさせているのを見かけると、オランダの空港トイレを思い出してしまいます。

では、今年も読者の皆さまの開ウンをお祈りして。そろそろ、おあとがよろしいようで。失礼しました。

(日刊サン 2022.1.14)

木村伊量 (きむら・ただかず)

1953年、香川県生まれ。朝日新聞社入社。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、ワシントン特派員、論説委員、政治部長、東京本社編集局長、ヨーロッパ総局長などを経て、2012年に代表取締役社長に就任。退任後は英国セインズベリー日本藝術研究所シニア・フェローをつとめた後、2017年から国際医療福祉大学・大学院で近現代文明論などを講じる。2014年、英国エリザベス女王から大英帝国名誉勲章(CBE)を受章。共著に「湾岸戦争と日本」「公共政策とメディア」など。大のハワイ好きで、これまで10回以上は訪問。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
Twitter
Visit Us
Instagram