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【今どき ニッポン・ウォッチング】日本農林水産物の輸出額「1兆円超」達成
周知のように、日本は世界的にみて国土はかなり小さい方だが、人口密度の方はかなり高いこともあり、食糧の自給度はかなり低く、毎年国外からの食糧の輸入に頼ってきた。ところで、昨年日本の農林水産物の輸出額が「1兆円超」達成したニュースは、大きな喜びをもって迎えられた。
農林水産省の発表によると、昨年1月から11月の輸出額は前年同期比26.8%増の1兆779億円。その内訳は、ホタテ貝が〈前年同期比103.2%増〉、日本酒〈73.5%増〉、イチゴ(73.2%増)などが大きく増えた。日本は今後も、この様な農林水産物の輸出に力を入れようとしている。
日本は2013年に、農林水産物を7年後の2020年に「輸出1兆円」の目標を掲げた。日本の食料生産に関して、これまで農水産省の掲げる目標の多くは、未達成であったことから、1年遅れではあっても、この輸出額1兆円の目標達成は大変貴重で高く評価できるものである。
政府は「1兆円」の目標達成後、2025年には「2兆円」、2030年には「5兆円」を目指すという、新たな目標を掲げた。というのも、「1兆円」を超えても、国内総生産額に占める割合はなお2%に留まるに過ぎないからである。農産物の輸出が農業総生産額に占める割合は、米国では12%、英国では18%にみるように、農産物輸出大国を大きく下回っており、輸出の拡大は、まだまだ余裕が大きいというのが農水省の見解である。
ところで、これまでの世界の日本食ブームを追い風に拡大してきた輸出の成長は、2019年以降鈍化している。その主な理由は、海外の日本食ブームの担い手である富裕層が必要とする日本産の食材が、既に飽和状態になっていることである。そこで、これからは中間層を対象にして市場の拡大をしなければ、輸出量のさらなる拡大は難しくなるとみられている。
日本産のコメを例に見ると、減反政策で政府が生産量を調整してきた為、品質の良いコメを、高価格で販売しようとする傾向が強かった。この方式では、生産コストを高止まりさせる結果を招きかねない。むしろ政府の生産者に対する支援は、品質の改良や物流の効率化などの調整や運用、それに中長期的な競争力の強化につながる政策に絞るべきなのかもしれない。
当面、最も尽力すべきことは、福島第一原発の処理水問題であろう。食料輸出関係当局は台湾に対して同様に、輸出先の国々に日本産の農産品の輸入解禁を働きかけることである。
さらに、目下農業生産者が政府当局者に喫緊の解決を求めるのは、日本で開発された貴重なブドウ、イチゴやサクランボ等々のブランド果実品種の近隣諸外国での無断栽培を差し止め、禁止する対策が確実に実行されることである。これによって、我が国の知的財産権の一つである植物品種の特許権や生産者自身の生産が保障されることを願うところである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.227
早氏 芳琴