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今どきニッポン・ウォッチング

【今どき ニッポン・ウォッチング】「フラワーパーク」の入園料、花の開花具合によって決める

 世にも珍しい「フラワーパーク」の入園料を、当日園内の花の開花の具合の実況に応じて決めるという。日本の栃木県足利市にある「観光施設」=「あしかがフラワーパーク」のダイナミックプライシング(変動価格制)がそれである。この観光施設は曜日ごとの混雑状況などを反映して入園料を変える、他のテーマパークとは大きく違うのである。

 そのため、ほぼ毎日早朝から園長を始め、各部門の責任者が園内を見て回り、園内の花の咲き具合を確認してから、当日の入園券の価格を100円刻みできめることにしている。季節の花が見頃の時期は高く、咲き始めだったり、ピークを過ぎたりすれば安くするということである。

 現在の大人の入園料は約400円~2100円と幅がある。8月は花が少ない時期でおおむね400円~500円だが、350本以上の藤の花が咲き誇る4月下旬~5月上旬は、1500円以上の日が続く。

 このフラワーパークの開園は1997年である。変動価格制はそれから間もない頃に始まった。「花の咲き具合いがいい時とそうでない時で、何で同じ入園料なのか?」、運営会社当時の園長が、知人からこんな一言を聞いて導入を思い立った。

 当初は苦情も多かったというが、試行錯誤を繰り返して新たな料金体系を探ってきた。花が思ったより早く見頃を過ぎてしまい、前売り券の購入者に100円を返したこともあったという。それが今では、客から「いつが一番、入園料が高くなるのか」と問い合わせが来るほどになった。

 行楽シーズンにはできるだけ入園料を高くしたいのが本音だが、花が傷み始めれば料金を下げる。逆に多くの人出が望みにくい平日でも、花の状態が良ければ料金を上げる。「花基準」を徹底する理由について、園長は「一度割高だなと思われたら、もう足を運んでもらえない。目先の利益より、長期の信頼を得ることを大事にしたい」と話す。

 来園者の7割はリピーターである。コロナ禍前、地方の観光施設としては上位レベルの年間160万人を集め、直近は120万人まで回復してきた。

 変動価格制は、需給に応じて柔軟に価格を変えることで、収益を最大化する仕組みである。しかし需給だけを反映した値付けが最適とは限らない。消費者に納得してもらえる価格を探る努力が欠かせないのが最も大切である。

 現代の商取引にこのような「取引の仕方」を堅持するのは、世界的に珍しいと言わざるを得ない。でも、このような取引の仕方に共感し、その公平、誠実に感激し、賞賛する人々もある。それが現実の世界。あなたはどちらでしょうか?

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.270

早氏 芳琴

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