前回に続き醤油のお話です。みなさん、醤油への親しみも湧いてきたのではないでしょうか。ところで、お寿司屋さんに行って、板前さんが醤油のことを“むらさき”と言っているのを聞いたことはありませんか? また、“ツウ”のお客さんと思われる人が、粋にむらさきと言っていることもありますね。
一説には、そのむらさきの呼び名は、醤油の色から来たことで、昔の人は、赤褐色の色を紫と言っていたようです。こうして小皿に垂らした醤油の色が赤褐色だったため、そう呼ぶようになったということです。もう一つの説では、醤油の原料の大豆に、丹波の黒豆(紫色の大豆)を使うと紫色の醤油になったことから、呼ばれるようになったとのことです。
もちろん、私達はお寿司屋さんで「醤油をください」で大丈夫です。他にも、“シャリ”は寿司飯のこと、“ガリ”は生姜の甘酢漬けのことですが、これらの用語は、それぞれの意味合いや謂われがあります。これらは寿司業界の隠語、または符牒なので、一般素人が粋がって使っていると、チョッと滑稽に映ることもあるかも知れません。
しかし、ここで知識として勉強をしておきましょうか。よく聞くのが“あがり”がありますが、お茶のことです。特に食事を終えて最後に飲むお茶のことをさします。もともと、花柳界の言葉のようで「最後のもの」という意味ということです。それに対し、最初に出すお茶は、“出ばな”とか、“お出花”と呼ぶようですね。こちらも客側は「お茶をお願いします」が無難なところです。
そして、食べ終わって支払いの場面で、「“おあいそ”お願いします」と言ったりします。勘定、会計のことを指します。もともとは、「お愛想づかしですが、お勘定をお願いします」と、店側が使う言葉が短縮されたのもので、お客さんが使うのはチョット違うと思います。ですので「お勘定、お願いします」でOKです。
お寿司のネタですが、よく“光もの”という言葉を聞くと思います。まさしく魚の背中が青く光っているもの、サバ、アジ、サンマ、イワシ、コハダなどを指します。これの魚は酢締めをしているのが一般的です。
“ギョク(玉)”は、玉子焼きのこと。最近のバラエティー番組で参加者が、「寿司の良し悪しはギョクでわかるよね」などど言うような話をする方がいますが、昔の寿司職人の腕前を見る目安とはなっていたことは事実ですね。
“おどり”は、主に、車海老などを生きたまま握ったお寿司を言います。ネタが踊っている? “かっぱ”は、きゅうり巻のこと。語源は河童はきゅうりが大好物だとか、きゅうりの切り口が河童の頭の皿に似ているのだとか、諸説あります。“鉄火”は、マグロの赤身を巻いた海苔巻き寿司を指します。昔は、賭博場を鉄火場と呼んでいて、博打をしながらも食べやすいように考案されたようですね。
江戸前の寿司が今日まで引き継がれてきていますが、当時の“粋な生活の響き”が、寿司の呼び名に溢れているのもイイものですね。