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とどけMahalo! アメリカ本土便り

ウイスコンシンで独り言   敗者のいない野球“ミラクルリーグ”

敗者のいない野球“ミラクルリーグ”

 自分達の毎日の散歩道に小学生にちょうどいい、整備の行き届いた野球場があります。この球場には観客席もあり、放送施設や得点を表示する掲示板もあります。先日この球場近くを通ると野球の試合の最中でとても賑やかな場内放送や観客の声援につられて足を止めました。

 この球場はミラクルリーグと言って、いろんな障害があると思われる少年少女のためのもので、三振がなく、アウトもありません。それで三球ほど遠くから投げて打てないと、ピッチャー交代で、次のピッチャーがかなり前に出て、超スローボールを投げます。それで大抵の子供は何とかボールを打てますが、打てない子供がいると、最後にはバッティング ティーと呼ばれる固定した棒の上にボールを置いて打たせます。「ガツーン」と音を立てて、ボールが飛ぶと一斉に歓声が飛び交い、打った本人は一塁へ誰かに付き添われてたどり着き、嬉しそうな顔をしています。

 普通の少年野球では年齢やら身長などの制限がありますが、このミラクルリーグにはそんな制限はないようです。男女の区別すらありません。どんな状態でもこの球場までこられて、参加できるなら、すべての少年少女が参加できるようです。自分は長いこと年齢やら運動能力で「制限を加える」ことを普通に受け入れていましたが、そうすると、野球がしたくても、野球に参加できない子供達がでてきます。そうした「垣根」を取り去ってしまったのが、この「ミラクルリーグ」です。多少の障害があっても「したい」子供にはさせる。みんなで助け合って、できないことをできるようにする。それがミラクルリーグ野球のようです。

垣根を取り去る

 ハワイに住む日本の方々はひょっとすると、世間体を気にしたり、例えば、女だから…、年だから…、と窮屈な日本社会から解放されてのびのびと生活されているかもしれません。自分自身もなんと中年過ぎになってから大学院に入り直しました。もし、「年だから」とか「世間体が」とか考えていたら、自分の人生後半の自分はありませんでした。「できない」ではなく、「どうしたらできるか?」って考えるのはいいことだと思います。

誇らしげな子供達

 この「ミラクルリーグ」に参加する子供達の障害の程度もいろいろのようです。それでも普通の子供の用に野球用具を身につけ、立派な球場で観客を前にして、参加者全員がヒットを放ち、塁に立ち、やがてホームインします。みんな嬉しそうです。家族にしても、遠くまで連れてきてよかったって思っているはずです。障害があるからできないではなくて、どうしたら「できるか」を考えたミラクルリーグの人達。「ガツーン」と当たってボールが転がり、嬉しそうに走る子供達。思わず自分達も拍手を送りました。

とどけMahalo! アメリカ本土便り No.107

大井貞二(おおいさだじ)

1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。

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