恋って、なんだっけ?一頃、“干物女”という言葉が流行した。面倒だから、何となく、という理由で長らく恋愛を放棄し、心がカラカラに干からびてしまった状態を指すが、長らくそうかもしれない。
ニューヨークでメディア会社を経営する、敏腕社長のビル・パリッシュ。65歳の誕生日を前に、愛する娘アリソンとスーザン、有能な部下ドリューに囲まれ幸せな生活を送っていたが、ある日胸に強い痛みを感じる。それと同時に、どこからともなく「そうだ」という囁き声が聞こえるようになり、不審に思っていると数日後、ひとりの若い青年が現れる。青年はビルを迎えに来た死神だと告げ、人間の世界を案内してくれれば寿命を数日延ばしてやろう、と提案を持ちかける。彼は承諾するものの、死神はあろうことか人間に恋をしてしまうー。
とにかく甘い!まるで特大のチョコレートファウンテンに溺れたよう。スーザンが婚約者のドリューに対してややクールなことを心配し、本当の恋とは何かと諭すビルに激しく同調した。「愛とは、情熱だ」。続けて、地に足がつかない想いや目の眩むような興奮は、と畳み掛けてくる。使い古された言葉が並ぶが、ビルを演じるアンソニー・ホプキンスが台詞にすると深みがあり心に響き、そうだ、恋に落ちるとはまさにそのような感覚だ、と思い出させてくれる。そして、青年の姿を借りた死神=ジョー・ブラックが周りの人々と触れ合う様が、子供のように可愛らしい。あまりにピュアで、こんな風にまっすぐに人と接し、愛することが出来たらどんなに素晴らしいかと思ってしまう。
出会いは作中のカフェはもちろん、職場や趣味の集まり、行きつけのバーにも転がっているだろうが、稲妻に打たれるような恋はなかなか無い。死神役のブラッド・ピットの美しさを堪能しつつ、そんな恋愛を存分に擬似体験するという手もある。ひたすらスイートな気持ちに浸りたい、純粋な恋を思い出したいという時におすすめ。ハッピーバレンタイン!
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/昔は父が会社でもらってくる義理チョコが楽しみでした。お返しは母がデパートで選んでいたので面倒くさいとボヤいていましたが、これも日本らしい風習ですよね。
シェアする