今一番やりたいこと の話
ハワイに引っ越してくる直前、日本食を食べ納めることだけに集中していました。いわゆる日本食に加えて、和菓子、刺身などの生モノ、うどんやそば、ラーメン、コンビニのお弁当にスイーツバイキング……ハワイでは食べられそうにないものはここぞとばかりに食べました。多くの友人たちが送別会を開いてくれたこともあり、ほぼほぼ未練は残さずにハワイの地に降り立ちました。それでも、きっと自分は日本の食べ物が食べたいと泣く日が来るのだろうな、とぼんやり思ってはいました。
いざハワイ生活が始まると、最初は慣れない食べ物に苦労しっぱなし。日本のように簡単に美味しいものが手に入るわけでもなく、自分で料理をしようにも日本とは勝手の違うキッチンでは失敗の連続。もちろん少し贅沢をすればいいのですが、貧乏学生のお財布はそれを許しません。日本だったらコンビニですぐお弁当が買えるのに、と思いながら、大学の自動販売機で買ったシリアルバーをかじった昼休みのことは一生忘れないでしょう。
とはいえ、人は慣れる生き物。今となっては食べ物で悲しい思いをすることはほとんどなくなりました。与えられたものと環境でいかに料理をするかもわかり、それなりに自炊もできるようになりました。苦手だったスパムやサンドイッチも克服。お気に入りのレストランやテイクアウトのお店も増え、かつて思っていたよりは食べ物に苦労することはなくなりました。
一方で、予想だにしていなかったものにホームシックを覚えています。それは文房具や雑貨のお店を当てもなくぶらぶらしたいという欲求。具体的には無印良品やLOFTに行きたくてたまりません。ハワイにもTARGETやFisher Hawaiiなどのお店がありますが、やはり私が求めているものとは少し違うのです。例えば、日本にいた頃は、この時期になると、雑貨屋の店頭にずらりと並ぶ翌年のスケジュール帳を吟味して、吟味して、吟味して、来年に思いを馳せながら買うのが通例でした。ところが、ハワイで手に入るスケジュール帳の種類はさほど多くもなく、「何か違うんだよな……」と思いながら妥協するしかありません。
Amazonで買えばいいじゃん、と思われるかもしれませんが、私はあの目的もなく店内をぶらついて、目に入った素敵なものを買うかどうかお財布と相談しながら考える時間や、新発売のペンを試し書きすることや、かわいいキャラクターものに年甲斐もなくときめく自分や、買った後に開封するあの瞬間が大好きだったのです。
これもいつかは慣れるのでしょうか。アメリカスタイルのちょっと無骨なスケジュール帳に抱いている、ふわっとした違和感もそのうち消えるのでしょうか。そうであって欲しいと思いながらも、いつか日本に帰ることがあったら、今度は見境なく雑貨や文房具を買ってしまいそうで怖い私なのでした。
CAN OF ALOHA No.43
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_channel をご覧ください。