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今どきニッポン・ウォッチング

「富岳」、コロナ禍の対応に素早く参加

「富岳」、コロナ禍の対応に素早く参加

 日本の理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューターが、世界一の栄誉に帰り咲いた。世界のスパコン研究者による組織が、1993年から発表してきた世界ランキング「TOP500」で日本が、再度世界第一位に入賞したのは、2011年の「京(ケイ)」から9年ぶりの栄誉である。 

 この新王者の名は「富岳(フガク)」である。昨年まで首位だった米国製スパコンを、2倍以上の速い速度で引き離し、優勝した。日本製のスパコンが、初めて世界一位になった9年前の日本は、唯々「世界一」の地位を目指すために、相当無理をして造り上げた独自のスパコン京であった。速度では世界一速かったが故に優勝を獲得したが、使い勝手があまり芳しくはなかったため、「商用化での成果」を収めることができなかった。 

 この失敗の経験を教訓に改善を重ねた結果、今回出来上がったのがこの富岳であった。単独開発を改め、技術導入を広く世界に求めた。例えば、ソフトを動かすのに必要な仕様を、スマートフォンなどのCPUで有名な英Arm社の仕様に基づく設計にした。そのため動かせるソフトが増え、パワーポイントさえ動かせるようになった。AI研究向けやビッグデータの処理に強い機能も盛り込んだ。そして、CPUの製造は台湾TSMC社が担うことになった。回路の配線の間隔が7ナノメートル(ナノは10億分の1)という世界最高峰の密度になった。 

 こうしてできた最新のCPU「A64FX」は、使いやすさに加え、速さと省エネのダブル効果も達成できるようになった。このようにしてA64FXを約16万個つなげた富岳が遂に完成したのである。 

 

 富岳が理研のセンターへの搬入が終わったのは今年の5月頃で、今でもまだシステムを調整中ではあり、本格的稼働は来年度の予定である。しかし、「コロナ禍」が全世界で猛威を振るっている現状にあって、富岳をそのまま待機させることは、「宝のもち腐れ」となりかねない。そこで早速その「腕前」を拝借することになった。 

 富岳を使った計算で、新型コロナウイルス感染症の治療薬の候補となる既存薬が数十種類見つかった。これを機に、製薬会社や研究者は協力し、治験などについても検討するという研究開発の道が早められたと言う。また、抗ウイルス薬や抗がん剤など2128種類の薬を対象に、ウイルスの増殖やその働きを抑える可能性のある数十種類の有望な薬も判明したのである。 

 感染の予防と治療に関する特効薬の開発でしのぎを削る諸外国においても、世界最優秀のスパコン開発は極めて重要な要件と言えよう。我が国がこの面において、世界トップの栄誉を再度獲得できたことは、日本最先端の科学技術がいまだに健在である証左であり、誇りを感じずにいられない。日本はまだまだ捨てたものではない、と! 

 

 コロナ禍で不安感募る、先行きが見通せない今現在において、富岳は「みんな、一緒に頑張ろう」という気持ちを奮い起こしてくれたようである。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.186

早氏 芳琴

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