街路樹からの落葉が風に舞い散る季節を迎えました。12月7日頃は24節気では大雪(たいせつ)21日は冬至です。雪国からは積雪の便りが届けられるようになりました。そろそろ冬本番の到来です。
日本では太陽の恵みが少ないこの季節には午後4時を過ぎると多くの街灯があるにも拘わらず、まさに“逢魔が時”で人も景色も暗闇に沈み隣を妖かしが歩いていても見過ごしそうです。そんな時、家々に灯る暖かな光を見るとほっとします。ヒトは古来より火を使いより多くの食を確保し、闇を祓ってまいりました。その記憶が現代に生きる私たちにも受け継がれているようです。
一方で冬は家族団らんを楽しむ絶好の機会です。これからのクリスマス、そして続くお正月だけでなく暖かい光の中で過ごす日々は心豊かになるのではありませんか。そうした機会にはアルコールを嗜む方々では用量が増える可能性も考えられます。
東海大学、慈恵医大大学医学部のグループが行った日本人3万人の症例対象研究の結果が2023年1月に公開されました。研究は「アルコール摂取習慣と白内障リスク」に関してで、先に結果をお伝えすれば、有意な用量反応関係があることが分かりました。因みに飲酒を中止するとリスクが低下することも報告されています。
白内障は高齢者の大半に症状が認められるほど有症率の高い目の疾患で、眼のレンズとして機能している水晶体が混濁し、見る機能が低下することで日常生活にも一定の不都合が生じます。従来から飲酒が白内障の一因であることは指摘されていましたが、一貫した研究が行われていませんでした。加齢性白内障は年を重ねるほどハイリスクとなりますので、今回の研究では69歳を上限としています。飲酒習慣のある方以外では高血圧・糖尿病を患っておられる方や屋外作業に従事しておられる方では白内障に罹患している割合が有意に高かったとのことです。
飲酒量としては1日あたりの摂取量(飲酒しない/2ドリンク以下/2~4ドリンク以下/4ドリンク超)で区分した結果、一日あたりの摂取量が2ドリンク以下であっても有意なリスク上昇が認められたと報告されました。白内障は痛みなどのシグナルが発せられないためについ軽視しがちですが“何となく目が霞む”“光が眩しい”といった症状があれば早めに眼科などを受診なさってください。
世界での失明は第1位が白内障です。けれど現在は治療法も確立していて回復が充分に期待できます。加齢ではなく、アトピー性皮膚炎や外傷性が原因の場合、若い方でも罹患する可能性が高く、ある日突然片方の視野が失われたといったケースもありますので、今は問題なくても常に自覚症状にはご注意ください。
暖かな光の中で穏やかな会話と食事でアルコールを嗜まない日があることは肝臓にとっても僥倖です。来たる年は戦争や侵略、環境破壊が少なくなりますように。
神楽坂発 お身体へのお便り No.123
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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