ホノルル警察(HPD)は、週末にワイキキのホテルで発生した集団による薬物過剰摂取事件で、2人目の男性が死亡したと発表したとKHON2が報じている。なお、HPDは、この事件を目撃者のいない死(Unattended Death)の捜査に分類している。
現場で4日(日)、44歳の男性の死亡が確認されたが、同日午後には53歳の男性も死亡が確認されたことが明らかになった。なお、他の3人は入院中となっている。
KHON2が死亡者の兄弟の一人に話を聞いたところ、亡くなった男性はコナ在住で、3日(土)夜にコンサートを見るために妻とホノルルに向かったという。この夫妻はめったに外出せず、酒も飲まないそうで、コンサートに来ていた友人たちによると、夫妻は会場でも飲酒していなかったという。家族はこのニュースに大変ショックを受けているが、同じく入院している妻は回復に向かっているとのこと。
この兄弟によると、同じくコナから来たと思われる他の2組のカップルが一緒におり、4日(日)午前6時45分頃にホノルル救急医療サービス(EMS)と消防隊が現場に駆けつけた時、兄とその妻は自分たちの部屋にいなかったという。
これは、ハワイでフェンタニルが命を奪った多くの事件のひとつだが、当局によると、被害者のほとんどは、少量でも致死率の高いフェンタニルを摂取していることに気づいていないという。ホノルルEMSのジム・アイルランド局長は、「ここ4~6週間、フェンタニルの過剰摂取が急増している。毎日1人以上の事例が起きているほどだ」と述べている。
フェンタニルの多くは、錠剤や物質への含有量を管理しない薬物ラボで製造されている。アイルランド氏は、「そのため、1回分の量を手に入れたつもりでも、想定の10倍以上の威力を持つ強力な薬物である可能性がある」と警告する。
当局によると、フェンタニルの最も一般的な形態は偽造処方薬で、具体的には鎮痛剤のオキシコドンだという。ハワイ・ハイインテンシティ・ドラッグ・トラフィッキング・エリアのエグゼクティブ・ディレクターを務めるゲイリー・ヤブタ氏によると、これらの偽造処方薬は、メキシコのカルテルによって作られ、国境を越えて米国内に流入しており、「フェンタニルが混入された偽造処方箋薬のうち、10錠中6錠は致死量の薬物が含まれていることが麻薬取締局の調査で明らかになっている」という。
ホノルル市議会は7日(水)に会合を開き、バーやクラブ、リスクの高い施設に、フェンタニルをはじめとする麻薬の過剰摂取の特効薬であるナルカン(ナロキソンの点鼻スプレー)の設置を義務付けるべきかどうかを議論する予定だ。EMSは、中毒に苦しむ大切な人を持つ友人や家族に、ナルカンを入手するよう勧めている。なお、ハワイ州では、ナルカンを無料で配布している。
フェンタニルは救急隊員にとって危険な物質であり、ホノルル消防署は4日(日)に危険物(ハズマット)部隊を出動させ、マルチガスメーターで廊下から部屋の空気質を検査したところ、正常な範囲内であることが確認された。しかし、さらに検査を行ったところ、ハズマット部隊は室内からフェンタニルの痕跡を発見。フェンタニルは非常に強力な物質であるため、初動対応者には手袋やマスクなど特定の手順と保護具が必要となっている。
アメリカ麻薬取締局(DEA)は、フェンタニルは粉末、錠剤、カプセル、溶液、岩石状の塊などさまざまな形態で存在すると忠告しており、皮膚への接触は、速やかに水で洗い流せば害はないと考えられるが、空気中の粉末を吸引することが最も有害な影響につながると強調している。また、手指の消毒液は皮膚からの吸収を促進する可能性があるため、使用しないほうがよいとしている。
シェアする
写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.6.6)