突然ですが、「エモい」という言葉をご存知でしょうか。若者言葉の一つといわれていますが、「感傷的」「感情的」を意味する英単語「エモーショナル」から作られ、何とも言い表せない切ないような懐かしいようなノスタルジックな感情を表すそうです。
元々は1980年代にアメリカで人気になった音楽のジャンルの一つであるEMOに端を発するという説もあります。例えば、学生時代に見た映画を大人になってからふと思い出したとき、胸によぎるありし日の自分に思いを馳せ、あのときの想い人をそっと思い出す……それは「エモい」瞬間と言えるのでしょう。
何をきっかけに「エモい」と感じるかは人それぞれで、音楽だったり景色だったり映画だったり、あるいは昔撮った写真だったり。私は決して音楽に造詣が深いわけではなく、楽器が弾けるわけでもないのですが、音楽に対して「エモい」と思うことが多いように感じます。
先日、なんと四年ぶりにカラオケに行く機会があり、レパートリーを増やすべく、少し昔の音楽を聞いているとき、甘酸っぱいようなほろ苦いような、何ともいえない感情に包まれてしまいました。
父が大ファンで一緒に聞いていたサザンオールスターズ。幼稚園のお遊戯会で踊った広末涼子。初めて見たときの衝撃がいまだに忘れられないモーニング娘。……「1990年代後半大ヒットポップ」などのプレイリストを聞いていると、家から小学校までの道のりや、中学校の真っ白な制服や、高校の時の自分ではどうしようもできなかった自分の心の一つ一つがくっきりと浮かび上がってきました。たとえば今から十年後、二十年後、今私が聞いている曲を聞いた時、私は何を思うのでしょうか。
若い人たちは、必ずしも自分の過去を何かに重ね合わせてエモさを感じるというわけではないようなのですが、どうしても私の中では懐かしさなくしてエモさなし、と思ってしまいます。
年を重ねると、その分思い出が増えます。一方で、エモいなんて思っている時間もないほどに忙しさも増していきます。そんな毎日の中でも、立ち止まって、エモさに身を委ねるのも必要なのかもしれません。
ハワイにいくつかあるカラオケの、ある意味「エモい」小部屋の一つの中で、ふとそんなことを思ったのでした。
CAN OF ALOHA No.86
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。