アメリカ海軍のレッドヒル地下燃料保管施設において、およそ1,100ガロン(4,200リットル)の有毒消化剤が漏れ出したことが29日(火)に判明したとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
漏れ出したのは水性皮膜形成泡と呼ばれるもので、燃料などの可燃性液体によって引き起こされる火災を、消火するために使用される。成分中にはPFASを含む。
PFASはいったん放出されると、自然環境の中で分解されるのに時間がかかるため「永遠の化学物質」と呼ばれている物質で、人体に取り込まれると健康被害をもたらすとされている。特に腎臓がんや精巣がんのリスクを高める。また、妊婦が摂取すると高血圧のリスクを高めるとされている。
海軍の発表によると事故は午後1時ごろに起こり、すぐに連邦消防隊が現地に出動して漏れ出た物質の回収に当たったという。
事故が起こったのは燃料施設の山側端にある通路。
レッドヒルの施設に関して法的規制権を持つ衛生局では、事故が起こってから2時間経った午後3時まで海軍からの連絡がなく、連絡を受けてすぐ職員が現地に到着した時に、化学物質はまだ回収されていなかったと述べている。
ハワイ地区海軍司令官であるステファン・バーネット中将は、州当局になぜすぐ連絡がなかったのかを問われ、次のように回答している。
「まず最初にしなければいけなかったことは状況の把握と、そこで働いている人間の安全を確保することでした。我々は実際に現場に行って、状況を確認し、化学物質が漏れ出した量や場所を把握したいと考え、それを実行しました。そして、任務に当たっている人員を安全に避難させなければいけませんでした。州当局の職員も現地で我々の作業の状況を確認し、納得していました。しかし間違えないでいただきたいのは、我々はこの事故を非常に深刻に受け止めているということです。我々はこの事故の調査を開始し、今後このようなことが2度と起こらないように対処するつもりです」
事故の原因については現在調査中だということだが、パイプから漏れ出した可能性が高いと見られている。
パイプに繋がれている消化剤貯蔵タンクは空になっており、タンクには1,100ガロンの消火剤が入っていた。
昨年の燃料漏れに対応するために立ち上げられた「レッドヒル・ジョイント・タスク・フォース」の司令官であるジョン・ウェイド海軍中将によると、29日には海軍施設エンジニアリング・システム部隊のエンジニアと契約業者らがメンテナンス作業を行なっていたという。
海軍と衛生局は、消火剤の回収作業は引き続き行われており、表層の水は汚染されていないと発表している。
衛生局環境衛生担当のキャサリン・ホー副局長は「この事故はひどいと言わざるを得ません。消火剤には永遠の化学物質と呼ばれるPFASが含まれています。地下水の汚染は、ハワイの水脈にとって致命的なものとなるかもしれないのです。現時点では詳細がすべて明らかになっているわけではありませんが、海軍とジョイント・タスク・フォースは、この事故がどのように起こったのかをすべて明らかにする必要があります。我々としては、事故の責任を国防総省にあるものとし、燃料の取り出しと施設の閉鎖のプロセスの中で適切な是正措置が取られるように求めていくつもりです」とコメントしている。
環境保護活動団体である「ハワイ・シエラ・クラブ」のウェイン・タナカ氏は次のように述べている。「海軍施設からの消火剤漏れ事故は深刻な問題です。有害な化学物質が地下に浸透して地下水に入り込んでしまったら、地質汚染だけでなく、これから数世代にわたって環境にも人間の健康にも被害が及ぶことになってしまいます。今回PFASを含んだ消火剤が貯蔵されていた場所は私たちの飲み水の元である水脈からたった100フィート(およそ30メートル)しか離れていないのです。正気の沙汰とは思えません」
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2022.11.30)