ネバダ州北部、州間高速道路80号線沿いにある小さな街エルコで、真っ赤な昆虫が大量発生し、まるで地面が大量の血に覆われたような状況になっているとAP通信が伝えている。
この昆虫はモルモンクリケットと呼ばれるもので、クリケット(コオロギ)という名だが実はキリギリスの一種だ。土の中に1センチほど埋められた何万個ものモルモンクリケットの卵が、5月下旬から6月上旬にかけて孵化し始め、この数週間、ネバダ州北部の広い範囲にこの赤い昆虫が侵入し、混乱を引き起こしている。中でも、アイダホ州とユタ州の近くに位置し、金鉱で知られる約2万人の小さな街エルコは、特に大きな打撃を受けている。
モルモンクリケットは、肉を焼くようなひどい悪臭を放ち、そのにおいは運転中に鼻を塞がなければならないほど強烈だ。タイヤや靴の底に付着し、その死骸は体育館の屋内にさえも散乱している。地元住民によると、動くと雨のような音がするという。
地元住民や自治体は、ほうき、リーフブロワー、高圧洗浄機、除雪機を使ってこの害虫を駆除しようとしたが、効果はなかった。州当局は、エルコ郡全域に、道路が滑りやすくなっていることをドライバーに警告する看板を設置した。ハイウェイは、死んだ仲間を食べようと集まってくる昆虫たちの人気のたまり場になっている。
赤い虫はハイウェイを覆い尽くしている。スプリング・クリークのジェレマイア・ムーアさんは、高速道路でモルモンクリケットの大群と遭遇し、車が道路から滑り落ちたという。「帰宅途中だった。カーブで少しスピードを出し過ぎたら、水が溜まった側溝に落ちてしまった」
ある病院では、患者が建物に入るまでの間、昆虫の侵入を防ぐことを主な任務とする臨時のパートタイマー4人を雇っており、そのグループは「クリケット・パトロール」と名付けられている。パトロールが勤務していない時は、他の病院スタッフが昆虫に対処している。循環器病棟の医療スタッフは、黒いスクラブ姿のまま、患者の診察の合間に病院の救急車乗り場の外に出て、ほうきでコオロギを払いのけた。また、ITスペシャリストが清掃作業を手伝うこともある。
なお、専門家によると、エルコでのモルモンクリケットの被害は、少なくとも8月中旬まで続くという。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.6.20)