ハワイがクリーンエネルギーの目標に向かって努力する中、再生可能エネルギー技術に付随するリチウムイオン電池の廃棄物の流れに対する懸念が高まっている。リチウムイオン製品は電気自動車(EV)や太陽光発電パネルの蓄電池に使用されており、リサイクルや廃棄が必要になった場合に高いコストと責任、環境への影響を伴う課題となっているが、どのようにリサイクルを行うのが最善かを検討する作業部会を設置するための法案が検討されているとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
下院法案1972は、環境的に健全な管理方法を用いたEVバッテリーのリサイクルプログラムを州内に設置することを目的としている。この法案は、自動車メーカーなどの生産者にバッテリーの管理責任を負わせるものだったが、反発を受け、EVバッテリーのリサイクルに関する政策提言を行う作業部会をハワイ州エネルギー局内に設置する形に変化した。なお、関連法案である上院法案2311は延期された。
ハワイ州におけるEVの普及は拡大しており、2月に登録された乗用EVは3万700台近くに達し、昨年の同時期から30.8%増加した。
州保健局によると、現在、リチウムイオン電池は企業から排出される場合は一般廃棄物として規制されているが、個人や家庭の場合に対する規制はない。商業用廃棄物は、米国環境保護庁のガイドラインに基づき、州外に輸送されなければならない。
また、バッテリーの発火による火災も問題となっている。リチウムイオンバッテリーはその組成上、特定の条件下で過熱・発火する可能性があり、一旦発火すると、熱暴走により消火が困難となる。ホノルル消防署(HFD)によると、昨年は18件のリチウムイオン関連火災が発生しており、最近では2月にカイルアの住宅で電動自転車のバッテリーが出火元となる火災が発生している。
州エネルギー局は、こうしたバッテリーの「島内処理プロジェクト」を立案し、推定2000万ドル(約30億円:150円/ドル換算)の費用で実証施設を建設するため、800万ドルの連邦補助金を求めている。この施設では、バッテリーを安全に州外へ輸送するために、扱いやすい部品や材料に分解処理を行う。金属リサイクルを行う「ラディアス・リサイクリング(旧シュニッツァー・スチール)」のカポレイ施設内に建設される見込みとなっている。
画像:Shutterstock.com
(日刊サン 2024.3.19)
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