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とどけMahalo! アメリカ本土便り

ウイスコンシンで独り言 油断大敵

ウイスコンシンで独り言 油断大敵

 今、私が住むコンドの網戸の開閉がうまく行かなくなってきました。無理に開けようとしたりすると、網戸を壊してしまいます。ちょっと網戸を持ち上げたり、開ける角度を変えたりして、網戸の機嫌を損ねないように丁寧にやさしく開けていましたが、油を差すとまるで魔法にかかったようにまた開閉が楽になりました。正に油を断ってはいけないんですね。油を差すという不断の手入れが大切なようです。  

「油断大敵」。その時、急にこの言葉と中学の時にこの言葉を話されたT先生を思い出したのです。T先生は声がよく、弁舌爽やかで、話すことに自信に満ちていて、とても説得力のある話し方をされる方でした。毎週月曜に週の始まりの言葉を用意されていて、ある日この言葉を黒板にきれいな書体で大きく書かれて、話をされたことを50年以上たった今でもはっきり覚えています。 

 T先生は戦前には満州にいて、戦後にはロシアに抑留されたとも聞いていました。聞くところによると、T先生は何人もの部下を従える部隊の長だったらしく、シベリアでは死線をさまよわれたとも聞いています。その頃のことをほとんど話されませんでしたが、今になって思うとその頃の日本人はどんなことを考えていたのか、知りたくなります。真珠湾攻撃を聞いた時どう思ったか? 日本が戦争に負けると思ったか? シベリアにはどのくらいいて、どんな生活をしたのか? ロシア人をどう思うか?……など聞きたいことがいっぱいあります。しかしその頃の僕には戦争とは終わったもの、過ぎた遠い昔のことと考えていました。 

 

 ところが中年を過ぎるあたりから、自分が子供の時に大人だった人の気持ちが段々わかるようになり、聞いてみたいこともいっぱいできてきましたが、その時すでに大人だった人達の多くは他界されていました。自分の両親にしても、父親は早く亡くなり、母親も病弱で世話をするばかりで、昔話をすることはあまりありませんでした。 

 

 今になって残念に思うことは親がどんな人生を歩み、その当時の世の中をどう感じていたかをあまり知らないことです。今回のコロナウィルスのことなどもやがて過去になるでしょう。我々が経験したバブル崩壊やらいろんな過去の自然災害など知らない世代も増えました。 

 我々はこうした自分がじかに経験したことを次世代に伝えていく必要があると思います。その際には新聞とかの報道の知識ではなく、自分しか知りえないこと、感じたことを誰かに伝えていくことが大切に思います。

とどけMahalo! アメリカ本土便り No.80

大井貞二(おおいさだじ)

1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。

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