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コラム とどけMahalo! アメリカ本土便り

ウイスコンシンで独り言 余命半年と告げられた人

 私達が毎日日常生活をしている一方で、どこかで誰かがお医者さんから「余命数ヶ月」などと告げられる人がいます。人は人生が少なくなった時、どんな気持ちになるのでしょうか?

 最近、世界の長寿村を調べたブルーゾーンズ(2012年発行)という本を読みました。この本の中にギリシャのイカリア島からアメリカへ移住したスタマティスという人も、お医者さんから「あと半年の命」と告げられた1人。その時、スタマティスはまだ60歳になったばかりでしたが、疲れやすく、よく息切れがして、階段など登れなくなったと思っていたら、肺ガンになっていたのでした。ペンキ職人として建設現場で粉塵を吸って、呼吸器系に悪い影響があったのでしょう。それと彼は煙草は何箱も吸うヘビースモーカーでした。あちこちの医者を訪ねましたが、診断は同じでした。

 そこでスタマティスと妻は肺ガンの治療をあきらめ、アメリカから故郷のギリシャ(イカリア島)で人生を終えることにしました。そうしたのは治療費や葬式代が地元のギリシャの方が安上がりだし、残ったお金は子供達に残してあげられると考えたからでした。

 ギリシャへ帰り、しばらくは床に就き休息していました。地元に帰ると昔の友人が時々訪ねて来てくれ、いろいろ昔話に花が咲きました。そのうちにスタマティスは少し元気になり、傾斜の多い地元の道をゆっくり散歩するようになり、そのうちに田を耕す農作業をし始めたのです。そして、収穫された野菜や果物を近所の人と分け合ったりして、野菜中心の食生活を送っていました。そしてまた、他の島民のように赤ワインを少量飲み、近所の幼なじみと長くお喋りをするようになったのです。

 余命半年との診断でしたが、やがて半年がすぎ、一年が過ぎました。また、知らない間にアメリカで経験したいた倦怠感がなくなり、農作業でも疲れることがなくなりました。そうこうするうちに健康を回復し、肺ガンはいったいどうなったのか、アメリカで診断を下したお医者さんを10年後に訪ねましたが、その時のお医者さんはみんな亡くなっていました。結局あと半年と余命宣告を受けた患者より、それを宣告したお医者さん達が亡くなってしまっていたのでした。

 この本の取材をした時点でスタマティスは百歳を超えていました。一体何がよかったのでしょうか?程よい量の赤ワイン、地中海式の食事、近所の人達との頻繁の心のふれあい、農作業をして家に閉じこもらない、町から離れたストレスのない田舎暮らし。いろいろなことが考えられるのですが、現代医学では解決できないことが、地元に戻り、自分の慣れた言葉をつかい、友人・家族と緊密な付き合いをすることでストレスがないことも大きいようです。

 今のストレスの多い都会での生活について考えさせられる話でした。

とどけMahalo! アメリカ本土便り No.176

大井貞二(おおいさだじ)

1988年にハワイに移住。地元の私立校で日本語を教える。その後、ハワイ大学大学院を経て、ハワイパシフック大学(HPU)にて世界中からやってくる学生に日本語を教え、最近退職。現在アメリカ本土に居住。

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