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デジタル版・新聞

コラム 来夏の映画観ようよ

鉄道員(ぽっぽや)

 

 ここ数年、「この映画は絶対に泣けるから!」と人に勧められても、よくある“感動映画ランキング”でもその通りになったためしがない。が、かつてストーリーもさることながらキャスティングも抜群で、人目を憚らずむせび泣いた邦画があった。

 

 北海道にあるローカル線の終着駅、『幌舞(ほろまい)駅』。その駅長、佐藤乙松は生真面目で仕事一筋の鉄道員。自らの職務に誇りを持っており、真摯な姿勢から同僚や後輩たちに慕われていた。しかし、代わりの人員もいない小さな田舎町の駅の“駅長”であるという使命感ゆえに、生後間もない娘が風邪を引いた時も、愛する妻が病に冒された時も、職場から離れることが出来ずひとり駅に立ち続けた。そんな不器用で真っ直ぐにしか生きられなかった男の回想とともに、幌舞に住む人々を描く。

 

 深々と降り積もる雪の中、ただ駅のホームに佇んでいるだけで絵になり、主人公・乙松が内に秘めている悲しみや仕事への熱意、人柄の良さすべてを自然に表現してしまう故・高倉健の演技力。また、現在では数本のみの蒸気機関車が走る姿や、石油や天然ガスなど新しいエネルギーの発展により衰退した炭鉱、寂れた町を見ていると、昭和の時代を生きたわけではないのにノスタルジックでたまらない気持ちになってしまう。そして、定年間近の乙松のもとに不意に現れた少女の正体がわかった時…嗚咽をこらえることが出来なかった。ただ、ひたすら哀しいかといえばそうではなく、見終えたあとにじんわりと心が温まる。

 

 なお、先月新型コロナにより帰らぬ人となったコメディアンの志村けんが炭鉱夫役で出演している。酒癖が悪く妻に逃げられ、息子と二人で幌舞へ移住してきたという設定で登場シーンは短いのだが、元々役者なのかと思うほどのはまり役で、もっと出番があっても良いのにと感じた。今年中に再び映画に、それも主演を務める予定だったそう。たくさんの人を笑わせてくれたように、役者としても間違いなく素敵な演技で魅せてくれたはず。本当に悔やまれる。

 

 


●加西 来夏 (かさい らいか)

 映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/以前、映画の雰囲気を味わいたくて撮影が行われた北海道・南富良野町の“幾寅駅”へ行ってきました。駅長室のセットもそのままで、まるで時間が止まっているようでした。


 

 

(日刊サン 2020.4.09)

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