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ハワイでの終活

ハワイでの終活vol.15 お墓を買おう! 生前墓のすすめ

昨年の終活特集から約一年。日本では従来の暗いイメージは遠のき、今や終活カフェができるなど、積極的にメディアでも取り上げられるトピック。家族の在り方が多様化するハワイで、まだまだ馴染みの薄い終活について少しでも多くの方々に興味を持って頂きたい。そんな願いを込めて今年も日刊サンがハワイで役立つ終活情報をシリーズでお伝えしていきます。

 

 

イマドキのお墓事情

 終活の肝と言っても過言ではないお墓の選択。最近の終活ブームで、お墓はすっかり「死後建てるもの」のから生きているうちに選ぶ「生前墓」へと変化している。

 ハワイに住んでいればお墓は日本にしようか、それともハワイにしようかと悩む方もおられるだろう。ハワイ永住者であっても、最期は日本がいいという人も多い。しかしいざ探し始めると、思わぬ壁にぶつかることも。

 まずは予算の問題。日本で永眠したいと希望する多くの人が、その額に驚くことになる。それもそのはず、お墓の相場は100万円以上が当たり前なのに対し、多くの人はそれを知らずに100万円以下の予算で探し始めるという。それではなぜ日本のお墓は高額になってしまうのか。

   内訳を見てみよう。日本にお墓を建てる際の諸費用は主に  

• 永代使用料  

• 墓石代  

• 管理費

となり、人口に対し土地が限られている日本、とくに都心部などではどうしても永代使用料が年々高騰する。永代使用料とは住居に例えれば家賃のようなもので、墓地のレンタル代にあたる。墓石代は選ぶ石やデザインによって変わってくるが、日本のお墓で後々問題になりがちなのは、管理費であるという。今回もナビゲーターの花水さんにお話を伺った。

 

「社会背景の少子化などから、日本では墓守問題が深刻になってきています。管理費の相場は年間1万円前後とそこまで高額ではありませんが、それでも定期的に納めないと、管理者にお墓を撤去されてしまいます。継承者不足で墓じまいを希望される方も多くいらっしゃいますが、墓じまいの後の遺骨はまたどこかに移動させなくてはならない。継承者がいる場合でも、お墓代が足りない。悩んだ末に、遺族が電車の棚に骨壷を置き忘れたふりをしたり、納骨堂に名無しで遺骨が送られてきたり。高齢化でお墓問題はますます社会問題化しています。」

 

 それでも先祖供養に熱心なシニア世代には、根強いニーズのあるお墓。前述のような日本国内の事情から海外を視野に入れる層も増加し、近年ハワイの霊園が注目されてきている。

 

 

日本人にも人気上昇中のハワイのお墓

 日本から比較的近く、日本人にも馴染みのあるハワイ。近頃は単なる旅行先としてだけではなく、お墓探しにも人気だそうだ。下手に日本国内で自宅から離れた土地にお墓を買うより、家族も気軽に渡航しやすいハワイは旅行ついでにお墓参りができるというメリットも。では、お墓を選ぶ本人にとってのメリットとは何か。意外かもしれないが旅行先に選ばれるのと同じ理由で、気候や景観の良さだという。心地よい風に吹かれて雄大な景色の中、大好きなハワイでゆっくり眠りたい……そう願う人も少なくないのだそうだ。

 

 人気の理由はそれだけではない。日本とハワイのお墓の大きな違いに、管理費の有無がある。「私の勤めるバレー・オブ・ザ・テンプルズもそうですが、ハワイのほとんどの墓地には管理費がありません。最初の永代使用料を払ってしまえば、死後追加でお支払いが発生することはないのです。だからご家族がいらっしゃらなくても日本のように無縁仏扱いとなって処分されてしまったりする心配もなく、安心してお任せ頂けます。アメリカは元々土葬の文化ですから、死者を掘り起こしたり、亡くなった後に追加料金を取ったりという発想がないんですね。」と花水さん。

 

 「永代使用のコンセプトも日本と違います。日本のように墓地を借りる、というよりこちらのお墓は不動産購入に近いのです。権利書の譲渡をしない限りは文字通り永久に持ち主の土地となります」

 

 お墓の料金も日本に比べてリーズナブルなものが多い。バレー・オブ・ザ・テンプルズでは二人用の小さなお墓が墓石代込みで6500ドルから販売されており、少ない月額でローンも組めるそうだ。

 

 

生前墓のメリット

 花水さんご自身、現在は克服した乳がんを患われてからとくに終活を意識するようになったという。「自分のお墓を決めた時は、何かあったらここに入れるんだという安堵感でいっぱいでしたね。生きている間であればお子様のご希望も伺えますし、ご家族で話し合って納得のいくお墓選びができるんです」

 

 経済面でも生前墓は、死後に購入するより節約できる場合が多いそう。「墓地のお値段はダイナミックプライシングと呼ばれる飛行機のチケットなどと同じ仕組みで、需要と供給に合わせて変動するんですね。人気のある墓地は年々値上がりします。だから早めに買われると購入価格が分割払いであっても契約時のまま固定されるので、お得になることがあります。多くの霊園では完済後にしか納骨できませんから、亡くなってからでは予算に応じたお墓選びをじっくりする余裕もなくなり、ご遺族が無理な支払いを余儀なくされるかもしれないというデメリットも出てきます」

 

 そしてあまり知られていないが生前墓は相続対策にもなる。お墓は非課税なので、相続税の課税対象から外れる。そのため遺族がその分の税金の支払義務を免れるのである。生前購入しておくことによって遺産相続前に遺族が墓代を立て替える必要性もなくなり、まさに一石二鳥の効果があるのだ。

 

 予算も立地もこだわって選び抜いた後には、墓石のデザインというお楽しみが待っている。追加料金なしでサンプルデザインから選択できるバレー・オブ・ザ・テンプルズのサンプル彫刻も好評だ。「墓石デザインは、生前購入の醍醐味だと思います。従来は名前と誕生日、命日と彫るものが決まっていましたが、今は色んな選択肢があります。ハワイらしくレイや亀を入れたり、デザインを考える作業は皆さん楽しそうです」

 

ハワイでのお墓購入ステップ

 お墓に関する問い合わせが増えてきているハワイ。永住権や市民権をお持ちの方は心配されないかもしれないが、ビザを持っていない日本人の間では海外のお墓というと敷居の高いイメージがまだまだあるそう。手続きがややこしいのではないか、特別な書類が必要なのではないか、疑問は尽きない。

 

 しかしイメージに反して、購入ステップは至ってシンプル。まずビザなどの書類は一切必要なく、バレー・オブ・ザ・テンプルズなどの霊園ではハワイに直接渡航できない人でも購入可能だそうだ。でもハワイに来られない人がどうしてわざわざハワイでお墓を買うのと不思議に思う方もおられるだろう。それは多くの場合、終活中の人が渡航可能な健康状態であるとは限らないからだ。その場合はラインなどのビデオ電話を駆使して、実際に霊園を案内してもらうことができるという。希望の土地が見つかったら、墓石についても綿密に打ち合わせした上で、完成品をオンライン上で見届けられる。

 

 通常の場合も、日本語のサービスを受けられない場合があるものの、希望の霊園に電話やメールでハワイに問い合わせると、予算に応じたお墓や納骨堂を紹介してくれる。バレー・オブ・ザ・テンプルズでは無料送迎を提供しているそう。お墓や納骨堂を視察後、気に入ったらいよいよ契約。契約書にサインし一括払いかローンなどの選択肢があれば選び、多くの場合はクレジットカード、もしくはアメリカの銀行小切手か振込を選択する。

 

 完済時に埋葬権利書とオーナーシップ証書が発行されるが、譲渡もできるこの証書は不動産と同じような扱いなので、大切に保管しよう。尚、お墓購入後にも花水さんが一つアドバイスがあるという。「お墓を購入されると、もう墓があるからあとは何もしなくてもいいやと勘違いされる方も多いのですが、お墓購入はあくまで最初のステップで、その後の納骨や埋葬、葬儀についても考えなくてはなりません。散骨するから私はいいの、という方も、散骨するには火葬費用がかかります。いざという時に慌てなくて済むように、その後の流れも把握しておきましょう」

 

 火葬でも骨壷や納骨費用、土葬の場合は埋葬費の他に棺を入れる「ボルト」という容器代もかかってくる。各霊園で納骨・埋葬のプランも異なるので、お墓選びの際は詳細を問い合わせておこう。  

 

 フィリピンの文化では、稼げるようになったら墓を買うように教育されるくらいお墓が大切にされているそうだ。遺族に迷惑かけずに、自分自身もイメージ通りの最期を迎えることができる生前墓。ハワイでは健康なうちに用意したお墓を、「おばあちゃんのお墓だ!」などと言いながら和気あいあいと訪問する「生前墓参り」も増えてきているらしい。終活の一環として前向きに、自分に合ったお墓探しをしてみよう。



今回のナビゲーター

終活カウンセラー 花水恵美さん

長年のファイナンシャルアドバイザーとしての経験を生かし、現在はバレーオブザテンプルのスーパーバイザーとして活躍。終活の全般的な悩みから具体的な相談まで日本語でも安心して出来ると好評。自身も事前準備の一環として夫婦の墓を近年購入。



(取材・文 シズカ・リード・ウエノ)

 

 

(日刊サン 2020.03.07)

 

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