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コラム 世界のマグロを追いかけて男の旅 こぼれ話

【3年ぶりのニューヨーク 6】早朝のブルックリンを歩く

 久しぶりのニューヨークを歩いていると、その街その街に独特の雰囲気が醸し出されていることに気が付きます。街の通りも全体の景色も、通る人々までも変わります。新たな発見や思いがけない出会いもあり、いろいろと自分が試されてしまうことさえもあります。

 早朝のイースト・リバーの反対側のマンハッタンに立ち並ぶ高層ビルを見ながら、私はクイーンズ区を南に下って歩いていました。やがてニュートン川に架かるプラスキ橋を渡るとブルックリン区のグリーンポインに入ります。そこからすぐに目に入ってくるのが、街の壁に描かれている色鮮なアートや、辛辣な風刺画のいくつかでした。それらはその街を表現しているようでした。街角の古く汚れている大きなレストランに剥がれそうな張り紙がベタベタ貼らていました。労働問題があったらしく、市によって閉鎖に追い込まれたようでした。今は哀れにも無惨な姿を現しています。

 そのような雰囲気とは対照的に道の反対側には、威風堂々とした教会の尖塔が空に向かってそびえ立っています。教会堂前には朝日を背にしたイエス・キリスト像が物静かに手を広げて立っていて、通り行く人々に何かを語りかけているように見えました。また、青く染まる朝空にひときわ目立つアメリカの国旗がたなびいているのが、とても印象的でした。

 大通りのマンハッタン通りに面していたマクドナルドの隣にはスターバックスがありましたが、あいにくスターバックスはまだ開店していませんでした。そこで私は小用を足したい事情もあり、マクドナルドに入ることにしました。店内のトイレに向かうとドアはロックされていて、店員に尋ねてみると「誰かがトイレの中に鍵を置いたままにした!」と言う返事が返ってきました。この言葉に「まさか?!」と驚きました。この店員の言葉は果たして真実であるかどうかと、一杯のコーヒーを飲みながら考えてしまいました。たしかに、この辺りは浮浪者も含め様々な人が行き交っているので、トイレにロックをしてお客さんに使わせないようにしているのかもしれません。

 そこで隣のスターバックスで小用を足すことにして、マクドナルドを出ました。すでに開店していたスターバックスに入り、トイレへと直行しましたがここもロックされていました。こちらは鍵ではなく、暗証番号を使うようになっています。店員にその暗証番号を聞いたのですが、その5桁の暗証番号をなかなか聞き取れないのです。愛想のない店員の早口と独特のイントネーションが混じり合っていて聞き取りが難しかったのです。もちろん、私の英語力不足もあります。ようやく3回聞き返して5桁の番号を聞き取ることができました。

STORY 202

永井 修二

北海道出身、在米38年 鮪関連水産会社34年勤続

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