前回に続き、海産物の産地偽装についてのお話です。去る4月12日をもって、2ヶ月ぶりに“熊本産アサリ”の出荷が始まりました。中国から輸入したアサリを偽って「熊本産」とした産地偽装の発覚により、2ヶ月間の出荷停止をしていました。
解禁に当たっては熊本県は再発防止対策を講じました。①出荷の際に漁場はDNA検査を行い、海外産の混入はしない。②県が認証した小売店でのみ販売。③QRコードトレーサビリティ導入と、県漁連と県が漁獲・販売量を監視をする…などです。
しかし、いったん消費者の信用を失ってしまった「熊本産」へ消費者が戻ってくるには、もうしばらく時間がかりそうです。熊本県、県漁連としても、今回のアサリ問題をきれいに解消しなければ、海産物だけではなく、ひいては農産、畜産物など食品全般の信頼までも回復できないことになってしまいます。
県としてはかなり厳しく対処していくようですが、それにしても、偽装に関わった漁協、漁場、漁師や業者を具体的に公表することもなく、またどのような制裁や処罰がくだされたのかも定かではありません。こうしたことには、その場凌ぎで曖昧なままにやり過ごそうとする根強い日本的な慣習の実態を現しているように感じてしまいます。
実際に天然のアサリが全滅に近い状態あることは事実で、この問題を直視し解決への対策を強く打ち出すこともぜずにいては、水産国日本の衰退があるのみです。日本の持続的漁業のために、国、県、漁連、漁師と連携して真っ向から海と漁業の再生に尽力してほしいものです。
もちろん海や海の幸は漁師たちだけのものではなく、“潮干狩り”を楽しみにしている家族連れや観光客もいます。初夏を迎える季節に浜辺へ出て、アサリを採るのは休日の楽しみでもあります。しかし、県内屈指の有明海沿岸では、今季は一般開放はしないようです。もともと天然のアサリが激減をしており、その原因を環境変化、潮流が変わったなどの言い訳を連ね、自分たちの獲り過ぎを認めず「エイやチヌなど天敵の魚によって減ってしまった」とも言います。自分たちたちこそ“悪者”なのにです。海を取り戻し、海産資源が回復するのは、まだまだ先のことかもしれません。
そしてまた4月12日には、こんなビックリニュースも出てきました。アサリと同じ産地偽装の手口で、今度はなんと高級魚のウナギの偽装が発覚してしまいました。奈良県のうなぎ店は、中国産を「国産」としてウナギの蒲焼を販売していたのです。この会社は創業が1967年ですから、老舗と言えるでしょう。デパート店や他5店舗で販売しており、2020年4月から11月までの期間に、偽装ウナギを約16万尾を販売していました。今は全店閉鎖に追い込まれたとか!
日本人にとって美徳の“正直さ”も、こうなると地に落ちたものです。