ハワイ観光の一つにホエールウォッチングがありますね。毎年12月~3月ごろにハワイ沖にやってくるクジラですが、悠々と泳ぐその姿は、たしかに迫力があふれ感動を与えてくれます。
ハワイ諸島海域から北太平洋には、さまざまな野生海洋生物が棲息していて、クジラ、イルカ、そしてアザラシ、アシカ、セイウチなどの海生哺乳類や、ウミガメなどの両生類などがいます。こうした海洋生物の保護のために“絶滅危惧種保護法(Endenger Spices Act)”というものがあります。絶滅のおそれのある種を指定し、捕獲等を規制し、重要生息地を指定するなどして保全を図ろうとするものです。
一方ハワイ近海で操業している延縄漁船は100隻余りがありますが、こうした規制がある中で、マグロ、カジキ、マヒマヒなどの延縄漁が行われています。1週間から2週間の漁を終えホノルルに帰ると夜明け前にはドックで水揚げが始まり、市場に並べられて競りが行われています。競り落とされた魚は、その日の内にレストランや魚屋へと届けられて行きます。
これらの市場で見られる多種の魚類は、それぞれに漁獲量、サイズ、漁獲海域、漁法などの厳しい規制があります。こうした規制は、魚資源の枯渇を防ぐためだけではなく、ウミガメや海鳥などの混獲を避けるためにも敷かれています。
混獲への規制は、ハワイや米国内だけではなく、“海産哺乳類保護法(MMPA”ーMarine Mammal Protection Act)”によって、海外から米国向けに輸出する全ての水産物にかかわる漁業に対しても、同じように混獲削減措置の導入を輸出国に求めるようになりました。そして、いよいよ今年の1月1日から具体的な措置が本格的に施行されるようになり、違反する漁業での魚類は、いっさい米国へ輸出できなくなりました。
すなわち、クジラやイルカ、ウミカメなどを混獲した漁船からの魚類とその加工品は、米国に入れなくなりました。日本が輸出している魚には、主に養殖ハマチやタイ、ホタテや、さらに沿岸漁業の天然魚などがありますが、今日本の輸出業者は、その対策に追われています。
MMPAは、もう50年も前の1972年に成立した米国の法律で、長年に渡り海産哺乳類の保護を世界に訴え続け、混獲の削減、停止を積極的に取り組んできました。しかし実際は、今年に入って国によって米国の規制に対して応えらていれない国も多くあるといのも事実なようです。
こうした米国主導の活動は、世界の漁業全般に影響を与え、日本の捕鯨漁にも大きな変化をもたらしました。イルカ捕獲漁などでは現地での反対運動が展開されるなど、大きなニュースともなりました。こうして日本の漁業のあり方や漁民の生活、さらに日本の食生活までも変わってきました。そして、ホノルルを母港とするマグロ漁船も、こうした厳しい規制のなかで苦戦を強いられています。