“代替食品”を通し、さらに”食文化”ということについて考えさられます。さまざまな食材を工夫し安心安全で安価な食品として、代替マグロの刺身も市場に紹介されていますが、気持ちとして本当にマグロを楽しめるものでしょうか。マグロが好きだからと言って、たしかに見た目に似せてあったとしても満足できるかということが疑問になります。
“食”という文化を築きあげるのに、それぞれの国や地域には固有の風土や伝統、習慣が基にあります。その土地ならではの季節の食材や素材もあります。さらに、食材や素材を生かすための地元の調味料や調理方法があり、知恵や工夫を支える料理道具まであったりします。こうしたさまざまな要素を組み合わせることで作られる料理、そして食事様式や演出や作法も独特なものとなっています。そこに、優れた独自の食文化が築かれ、ある面では“食の芸樹”とも言え、至高な領域まで高められてもいます。魅力的な創造性と感性が培われ、人間が人間らしく生きるためのかけがえのない世界と
なるのだと思います。
忙しく生きる私達の回りには、ファストフードや電子レンジ加熱食品など安価で便利な食品が揃っています。しかし、人間は大地や海河川の自然の恵みと繋がっていることや、そこに漁師さんや農家さんの汗水流す働きがあることを忘れ去ったり見失ってはならないと思います。
日本に伝わる「和食」が、ユネスコ無形文化遺産登録されたことは、日本人だけではなく世界にも大きなニュースになりました。やはり、“食の文化”は、とても貴重で大切なことを認識されたと言えるでしょう。
さらに、自然からのマグロなど魚が健康にいいのは、血液をサラサラにするオメガ3系の油や、ヘム鉄などのミネラル、たんぱく質がとても多く含まれているからです。見かけや味だけ似せても栄養面では、魚の代替にはならないのでしょう。やはり、食を楽しみながら必要な栄養を摂取することが重要であり、代替食品でマグロと同じ栄養を摂取することはできないのです。
一方には、“フードロス”に対しても目を向けていかなければなりません。各家庭の食卓からも、飲食店でも、小売店や加工品業にあっても、大切で大事な食材のロス削減へ挑戦しなければなりません。私達にとって、“食べ物を大切にする”という最も基本的なことが失われている現代でもあるように思います。
ちなみに世界の食品ロスは年間25億トンと言われています(2021年、WWF)。この数字は世界で栽培、生産れる全食料品のの40%が廃棄されてしまっていることになります。2011年の年間13億トンから2倍にもなっていることになります。
代替食品を考えていくと、確かに資源の枯渇対策が必須課題ですが、ここで代替食品を持ち出す前に取り組まなければならないことがいくつでもあるように思います。実際に、野菜、魚、肉が規格外として処分されたり、賞味期限切れなどで相当な量が捨てられていることになります。
今、少子高齢化を止められない日本で、漁業、畜産・農業・養殖業の事態はかなり深刻です。人手も足りず、後継者もいない、市場は競争が激しく採算が取れる価格で売れないなど、かなり厳しい現状です。このままでは数年後に食のための生産者がいなくなってしまうかもしれないのです。果たして、“代替食品”は救い主になれるのでしょうか。